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19Kyushu University Campus Magazine_2010.7でしたけどね。厳しかったけれど、ここで欧米人の研究のやり方を身につけました。浜瀬 頭で考えた結果より、実験して出た結果の方が良いように思うのですが。安達 そうですね。日本人の実験力はすごいと思います。日本人がとったデータは世界一ですよ。でも欧米の人たちは違うんです。実験よりディスカッションに時間をかける。私はその両方の大切さを理解しているつもりです。浜瀬 先生の研究室はどうなんですか。やっぱり、何時間かおきにまわられたりするんですか(笑)。安達 基本的には放任主義です。研究って人に言われてするものではないと思っています。自分が思い立って好きなことをやるのが大事。そこをつぶしたくないと思っているんです。但し、週に一回の全体ミーティングは厳しくやっています。3〜4時間かかることもありますね。浜瀬 お忙しそうですけど、ミーティングの時間は確保できてるんですね。安達 はい。そこだけは譲らないようにしています。議論することは大切ですから。それから、論文も大切ですよ。論文に関しては私も苦い目に遭っているので、私の研究室ではすぐに書かせるようにしています。上野 苦い目に遭ったというのは、どのようなことだったのですか。安達 実は、90年によく光るリン光性の物質を見つけて研究していたのですが、それをちゃんと論文に書かなかった。その時はたいしたことないマテリアルだと思っていたので。その後、アメリカで研究している時に、発光効率100%の素子を作りましたが、そのネタは、この90年のときに見逃していたアイデアなんです。浜瀬 でも、よくそのアイデアをアメリカに持って行かれましたね。安達 タイミングもあるんですよ。希有なことなんですが、アメリカに行った時、ちょうど有機合成の研究者が揃っていたんです。有機エレクトロニクスって、エレクトロニクスと化学の融合でしょう。研究分野においては水と油ですよね。でも、アメリカでは、異なる領域の研究者が、頻繁にジョイントして研究を進めている。そういう下地がそろっていたんです。上野 領域を超えたところのディスカッションが有効だったのですか。安達 ええ。化学の先生がいらして、その先生は、私ができないと思っていたことを、できて当たり前だと言うんです。結局、私が知らないだけだった。やはり、いろんな人と議論するのは大事なことです。有機光エレクトロニクスの 新たな展開へチャレンジ上野 現在はどのようなことを研究されているのですか。安達 材料のプリミティブな部分を研究しています。どういう電子構造にすると電子が速く移動するのかとか。良い材料ができれば、性能が1のものでも倍々にジャンプするんですよ。今、この分野は、企業がモノを作って、大学は基礎的な研究を進めています、大学だけで研究していて進まないことも、製品化に向けて企業と歩調を合わせてやっていると広がりが出てくるんです。上野 今後は、どんなことを実現したいと考えていらっしゃいますか。安達 まだ、私たちが踏み込んでいない領域に、有機物の自己修復機能があります。人間がケガをしたら、勝手に体をリぺアして治してくれますよね。その機能が利用できれば、壊れても自己修復できるデバイスができるんじゃないかと思うんです。浜瀬 自分で勝手に直るテレビとか。安達 そうです。上野 そんなことできるんですか。安達 できると思いますね。今まで、できないかなと思う技術がいっぱいありましたが、ほとんどのことができてるんですよ。EL素子の発光効率も、私が院生の頃は0.01%だったんです。光っていると言っても、教授にどこが光ってるんだって言われる始末で(笑)。企業の研究者には、

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