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20Kyushu University Campus Magazine_2010.7これは発光じゃなくて着色だと指摘されました。でも、今は100%です。だから、私はできない技術はないと思っています。それに、できると思って進める研究と、どうかなと思って進める研究とではプロセスが変わってくる。絶対できると思ってやらなければできないんです。上野 確かにそうですね。安達 次の大きなターゲットは、有機ELでレーザーを作ることです。電流を流して光るのだから、パワーをあげていけば、いつかレーザー発振するんじゃないかと。有機物はどんな色でも光るので、青色から赤色まであらゆる波長のレーザーができると思います。浜瀬 いまのレーザーは、使っている素材で色が決まっていますが、実現すれば、様々な発光波長のレーザー発光ができるってことですか。安達 はい、そうです。それから、ELは電気を光に変えますが、逆もできます。有機物なので、光合成と同じようなメカニズムを取り入れれば、太陽光を新しいエネルギー源として活用できるんじゃないかと。上野 太陽電池のようなものですか。安達 そうですね。今、なんとなく頭に描いているのはペンキみたいな感じ。家の壁に有機ELのペンキを塗るとそれが太陽電池になるとか。浜瀬 実現には、時間がかかりそうですか。安達 製品化は20年後くらいになるかもしれません。研究したレベルから、世の中で使われるようになるまで時間がかかりますからね。でも、このような大学の研究は大切だと思います。企業は、利益を出すことに必死だから1年先のことしかできないという状況になっている。でも、それでは、日本の技術はダメになってしまいます。5年、10年先の技術を育てていくのが今の大学の役割なんです。多くの感動体験を持って、自分の道を見つけてほしい上野 最後に学生へのメッセージをひと言お願いします。安達 教科書に書いてあることの70%は正しいけど、30%は違うって思うくらいの意識でやってほしいですね。例えば、有機物は電気を流さないって言うけど、なんで流さないんだろうって、一つ掘り下げて考えてみる。そうすると見えないものが見えて来ると思うんです。研究者として伸びる人は、感性が磨かれている気がします。でも、それはただ勉強するだけでは磨かれない。いろんな人と出会って、様々な体験をして、感動することが大切です。研究って、宝探しみたいなものです。砂浜のどこかに埋まっている宝をAくんは見つけられないけれど、Bくんは見つけることができる。その見つける能力をいかに磨くかってことが重要だと思います。上野 新しいものを見つけようとする志が大切なんですか。安達 まず、おもしろいって思えるかどうかってことでしょうね。今は、自由な時代です。逆に、価値観がいろいろありすぎて迷うことも多いかもしれない。学生の皆さんには、ぜひ、自分のやりたいことを見つけてほしいです。それが、たまたま研究とヒットするんだったら研究すればいいし、ヒットしなければ別の道もある。ぜひ、今の時間を大切にしてほしいですね。Profile安達 千波矢安達 千波矢 教授 プロフィール1988年 九州大学大学院 総合理工学研究科 材料開発工学専攻 修士課程修了1991年 九州大学大学院 総合理工学研究科 材料開発工学専攻 博士課程修了(工学博士)1991年 株式会社リコー化成品技術研究所 研究員1996年 信州大学 繊維学部機能高分子学科 助手1999年 プリンストン大学 Center for Photonics and Optoelectronic Materials 研究員2001年 千歳科学技術大学 光科学部物質光科学科 助教授2002年 科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究振興事業 (CREST)研究代表者2004年 千歳科学技術大学 光科学部物質光科学科 教授2005年 九州大学未来科学創造センター 教授 現在に至る2010年 最先端有機光エレクトロニクス研究センター(OPERA) センター長 インタビューを終え、左から浜瀬准教授、安達教授、上野さん

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