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13Kyushu University Campus Magazine_2010.11新しき挑戦者たち新城 道彦さん100年の節目に、韓国併合の成立を問い直す。 今年は、大日本帝国が大韓帝国を併合した「韓国併合」からちょうど100年目にあたります。 この節目の年に、九州大学韓国研究センターの研究員である新城道彦さんは、韓国併合の成立を問い直し、論文で発表しました。その内容は韓国併合、および植民地研究の転換期にあたる大きな成果として、日本、韓国で高い評価を受けています。「国家」を研究する中で、日本の近代史に興味を持つ。 新城さんは高校卒業後、金沢大学経済学部へ進学。ゼミでは経済学史を専攻し、法哲学の視点から「国家」について学んでいました。しかし、哲学のように、頭で考え論じるのではなく、資料に即して実証的に論じたいと考えるようになります。 「日本の近代史を辿れば日本の国家の形も見えてくるのではないかと思ったんです。特に、韓国併合のように、一つの国がもう一方の国を否定しながら統治していく過程に興味がありました」 その後、新城さんは九州大学の大学院比較社会文化学府へ進み研究を続けます。未開拓の領域を研究。その道のりは険しかった。 韓国併合に関する研究は、その併合が合法であったか否かを論じたものが主流で、これまで併合そのものを論じたものはありませんでした。 新城さんは、韓国の皇室・李王家(りおうけ)に着目。その処遇が韓国を統治する上で重要であったことを見い出し、日本が韓国の皇室を編入していったプロセスを研究していきます。 しかし、誰も手を付けていない未開拓分野の研究は、苦労も多かったと言います。 「関係資料がどこにあるのか調べることからはじめました。近代の資料の多くは東京に集まっていたので、お金がない大学院の時は苦労しましたね。また、資料が見つかってもそれを読めなければ意味がありません。資料をどう読むかも課題でした。それをクリアした後は、どう論文として構築するかを考えなければならかったので、論文を書き上げるまでの道のりは険しかったですね(笑)」Michihiko Shinjo04九州大学で学び、目指す分野を究めようとする次世代のプロフェッショナルを紹介します。今回は、今年の春、『王公族の研究』という論文テーマで博士号をとり、「韓国併合」研究に一石を投じた若手研究者の登場です。韓国研究センター 研究員博士(比較社会文化)もされなかった視点。

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