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17Kyushu University Campus Magazine_2011.1ーションのスキルアップを目的にしています。このため、スタンフォードやバークレー等の研究者を相手に発表や討論の訓練も行います。 研修が終わると、どの学生も程度の差はありますが達成感と自信をつけて帰るようです。ーーQREPというのは、短期集中型の研修ですよね。松尾 はい。これは、知的財産本部と当オフィスが共同で進めている研修なんですが、卒業生のロバート・フアンさんからの寄付を契機に始めたものです。シリコンバレー在住のリーダー、留学生、ビジネスマンなどに講師をお願いする一週間の集中プログラムです。3日間が講義、2日間は現地の企業や大学等を訪問します。 たった1週間ですが、学生は大きな影響を受けるようです。ーー確かに、参加した学生は元気になって帰ってきている気がします。松尾 そうなんです。それはQREPの合い言葉「迷ったらGO!」を実践しているからでしょう。迷ったらやってみろ。ダメだったらやめて方向を変えろ、ということです。 QREPだけではなく、英語研修や遠隔授業を受けた学生もそれぞれに活性化されています。留学する人も多く、留学生のチューターを始めたり、日経新聞を読み始めたり、英会話を始めるなど、新しいことにチャレンジしています。こういう反応を見るととても嬉しく、学生たちの将来が楽しみになります。研究を通して、ゼロから何かを掴む自信を得た。ーーところで、松尾所長ご自身のことをお聞きしたいのですが、どのような経緯でアメリカでお仕事をされるようになられたのですか。松尾 私は、子どもの頃からアメリカに行きたいと思っていました。しかし、当時の一般家庭ではアメリカに行くなんて考えも出来ない時代でした。大学では技術力を身に付けたいと思って九州大学工学部に入学し、ポリマー物性の高柳素夫先生の研究室に入りました。ここは全てのポリマーを一つの考え方で整理しようとする先進的な研究室で、高柳先生ご自身も世界に飛躍しようとしている時代でしたから、とても活性の高いところでした。そのまま博士課程まで進んだのですが、ある時、いつの間にか小さなことばかり議論している自分に気付いたんです。これが同じ研究室の佐伯康治先輩がいつも言っていた「タコ壷」じゃないかと思いました。何年も同じテーマで研究を続けていると、どうしても狭いところに入ります。これは良くないと思い企業に入ろうと決断しました。これまで培ってきたポリマーの知識を持って、現場の問題を解決したいと思ったんです。それで数社の企業を訪問しましたが、その中で真剣に話を聞いてくれたのが、日本ゼオンでした。企業には問題がいっぱいあります。でも、忙しくて解決できていない積み残しがあるんです。見方を変えれば、企業は新テーマの宝庫なんですよ。私は日本ゼオンで、2つも世界レベルの発見をして、それをきっかけに、九州大学から博士号を頂きました。さらには当時、世界最高の研究所といわれるアメリカのベル研究所から招聘を受け、念願のアメリカ行きのチャンスを手にしたんです。私は、ただ「タコ壷」から出て現場の問題に取り組みたいと思っただけだったんですが、その発想が良かったことと、やはり幸運でしたね。ベル研究所との契約が終了した後は、日本ゼオンに復職し、新設されたニューヨーク事務所に配属されました。ーーニューヨークでは、どのような仕事に取り組まれたのですか。松尾 当時、ゼオンにDCPD(ジシクロペンタジエン)が10万トンも九大応用化学高柳研究室にて

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