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21Kyushu University Campus Magazine_2011.1学肥料による野菜作りを実践されています。 講演会に参加した時、吉田さんが作られた人参を、保育園児たちが生のままバリバリ食べるのを見てこれはすごいと思いました。人参が甘いから、人参嫌いの子どもたちも食べることができるんです。吉田さんは、野菜そのものも生き物で、野菜がそのパワーをフルに発揮できる元気な状態にあれば、害虫も寄って来ないと言われます。化学肥料を与えても、サプリメントみたいに主要な栄養素だけを抜き出して、野菜に食べさせているようなものだから、ひ弱な野菜しか育たない。だから、どうしても農薬が必要になる。それよりも、植物と土の中の微生物との良好な共生関係を維持する方が、元気な野菜がすくすく育つんです。石川 先生は、その理論に則った野菜作りを研究されているんですね。比良松 はい。研究はまだ始まったばかりですが、これは、その理論を実証するために私が育てている人参です。どうぞ生で食べてみてください。比較できるように、スーパーで買った人参も持ってきました。こうして授業でも、学生たちに食べ比べをさせているんですよ。石川 これはおいしい。香りと甘みが全然違いますね。比良松 ジュースにするともっとわかります。これは人参をジューサーにかけただけなんですが、飲んでみてください。石川 うわあ、これも甘いですね。いったいどんな方法で、このような野菜を作られているのですか。比良松 化学肥料を使うとどうしても、苦くなったり甘みが乗らなくなったりします。それより、命だったものを土の中に戻してあげた方がいい。具体的には、微生物を増やすために給食センターなどで出る生ゴミを細かく砕いて、土の中に混ぜ込んでいるんです。土と混ぜると2週間位で完全に生ゴミがなくなります。生ゴミを微生物の力で発酵分解させて微生物を増やし、増えた微生物と共生させながら植物を育てるという作り方です。生き物は環境に依存して生きているので、自分のまわりにある環境要素はできる限り自分のために使おうとします。だから、育つ環境が変われば、病害虫に対する抵抗力や作物の味が変わる。こうして命のつながりを保ちながら営む農業は、自然の生態系と調和していて、これまでの環境を守ることにもなるはずです。農業をしなくても消費者として農業を支えられる石川 最近、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に参加して関税を撤廃しようとする動きもありますが、先生は、日本の農業の将来をどのように見ていらっしゃいますか。比良松 消費者の農業に対する役割が大きいと考えています。よく学生たちに「農業を支えるのは誰ですか」と訊くんです。彼らのほとんどは、農家とかお百姓さんと答えるんですが、農業に携わる人は、日本全人口のわずか3%しかいない。3%の人間だけで日本の農業を支えることは困難です。結局、

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