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循環型社会・環境共生型社会を目指して30Kyushu University Campus Magazine_2011.1 循環型社会システム工学研究センターは、工学研究院の附属施設として、循環型社会、環境共生型社会実現に資する持続型環境技術の開発を行うとともに、わが国だけでなくアジア地域の環境保全に資する研究活動を行っています。今回は社会基盤研究室、環境創成研究分野の北條純一教授の研究を紹介します。 北條グループでは、シックハウス症候群の原因とされる揮発性有機物質などを効率良く取り除くためのフィルタ材料の開発に取り組んでいます。 酸化チタン(TiO2、チタニア)は優れた光触媒作用をもち、光を照射するだけで近くにある菌や有害物を分解することができます。この機能を利用して、空気清浄機、水質浄化システム、防汚外壁材、抗菌衣類などさまざまな商品化もなされているので、既に身近で体験された人もいるかもしれません。酸化チタンの弱点は、有害物が近くに来たときにすぐには退治できないことです。そのため、酸化チタンの近くに、有害物を取り逃がさないように捕まえておく「相棒」が必要になります。我々が開発しているのは、酸化ケイ素(SiO2、シリカ)に数ナノメートルの微細な孔を無数に含み、強い力で有害物を吸着する新物質で、メソポーラスゼオライト(MPZ)と名付けました。MPZは、吸湿剤としてお菓子の袋の中などに入っているシリカゲルと比べて、3倍以上の比表面積(単位重さあたりの表面積)および吸着力をもっています。化学的なデザインにより光触媒チタニアとMPZを巧みに複合化すると優れた吸着/分解特性をもったフィルタ材料となります。 このプロジェクトでは、光触媒のみならず、酸化触媒(煤などの大きな粒子を低い温度で燃焼除去するための触媒)と組み合わせて自動車に搭載することにより、 小さい分子(アセトアルデヒドなど)から大きな粒子(花粉や煤)まで効率的に分解除去できて、しかも交換が不要となる未来型フィルタを目指しています。また、MPZ合成にはこれまで高価な原料が用いられてきましたが、本プロジェクトによって、安価な原料でも同等のMPZ合成に成功しました。これにより大量合成が可能となれば、自動車搭載用フィルタのみならず、一般家庭や病院など色々な場面で使える高機能吸着材料として展開できることを期待しています。北條 純一教授循環型社会システム工学研究センター■トピックスTOPICSTOPICS

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