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37Kyushu University Campus Magazine_2011.1TOPICS2010年夏現在の長崎県では、県外の主要大学へ進学できる学力をもつ高校3年生のうち3%が、家計の困窮のために大学進学そのものを諦めるかもしれないことが分かりました。また、その割合には地域差があり、長崎・佐世保の両市では2%前後、他の地域(主に離島、旧郡部)では5〜6%でした。それらの数字は「ほぼ悉皆(しっかい)」調査によって得られた、かなり正確なものであり、地域の実情を踏まえた現実的な対策につながることが期待されます。●エピソードや風評などにも影響されつつ「ムード」的に知覚されてきた事象が裏付けられました。●焦点を「主要大学」に絞ったことで、九州大学にとって直接的な参考となる情報が得られました。●県単位の集中的な調査によって、広域のサンプリング調査では得られない正確さの数値が得られました。教師-生徒間の濃密な関係(地域特性の一つ)を活かした簡便な調査方法を提示することができました。●結果に基づき、長崎県および九大(ひいては周辺地域や他大学)において、問題の正確な把握や、問題への冷静かつ現実的な対処が進むことが期待されます。2011年3月には、離島の現状をよりよく知るために五島(福江)を訪れ、現地の高校生や教員たちと交流する予定です。また、その後は、同様の調査を九州他県へも拡大して実施できないか可能性を探り、究極的には、九州にある九大らしい・九大ならではの手法で、経済支援にとどまらない総合的な地域の教育振興へとつなげていくことを目指します。プレスリリース http://www.kyushu-u.ac.jp/pressrelease/2010/2010-12-27-02.pdf本学の「高校向け窓口」であるアドミッションセンターでは近年、地元九州で、高い学力・意欲をもつ高校生の中に家計の困窮を理由に県外の大学への進学をためらう生徒がいることと、そのような生徒の割合は特に都市部を除く地域で大きいことを感知していました。しかし、それらを数量的に裏付けるデータや、県単位ほどの規模で集中的に調べた前例は見当たりませんでした。そこで、九大への入学者数が福岡県に次いで多く、離島が多い等の地理的特徴を有する長崎県をまず調べてみました。2000年以降に九州大学への進学が複数人あった長崎県内の27高校の教師に、国内の主要(目安として「旧帝大」レベルの)大学に進学できる学力をもっている3年生の数や、そのうち家計の困窮を主な理由として進学先を地元の大学に変えるかもしれない、もしくは大学進学自体を断念するかもしれない生徒数などを尋ねました。なお、その実施には長崎県教育庁のスタッフからもご協力をいただきました。家計の困窮が才能ある受験生の進学行動にどれほど影響を与えているか―2010年夏・長崎県における調査で正確な推定値を算出―悉皆調査―母集団を丸ごと調べること。母集団の一部を抽出して調べるサンプリング調査とは異なる。なお、本調査を「ほぼ悉皆」というのは、対象となった27高校の卒業生が、2000年以降に長崎県の高校から九州大学へ進学した人のうち92.2%を占めているため。丸野俊一(理事・副学長)渡辺哲司(高等教育開発推進センター准教授)大津正知(学務部学務企画課専門員)【用語解説】展 開意 義背 景方 法

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