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4Kyushu University Campus Magazine_2011.1特集 知の世界的拠点大学へ立つ様子が、ギリシャでもラジオで生中継されました。子供心に、何かすごいことが起こっているなと思ったのを覚えています。そのころから米国は私にとって憧れであり、夢のような存在でした。ギリシャ第2の都市であるテッサロニキにあるアリストテレス大学機械工学科在学中に、私は幸運にも、かつて米国のバデュー大学の教員であったG.Lianis教授に出会いました。成績が良かったこともあって、ある時私は教授に呼ばれ、米国の大学院で勉強を続ける気はないかと尋ねられたのです。「この時を待っていた」とばかりに、私はすぐにその誘いを受け、洋服を詰め込んだスーツケース一つと500ドルだけを持って、イリノイ大学に着いたのです。アメリカンドリームを追いかけたんですね。倉地 それはいつのことですか?ソフロニス 1981年のことです。イリノイ大学の大学院に入りR.McMeeking教授の下で博士課程の研究を始めました。その後、カリフォルニア大学サンタバーバラ校に移ると、今度は、材料科学の世界的権威であるA.Evans教授のグループで研究をする幸運に恵まれました。ここでは、材料と力学についての研究に従事し、1991年にイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校に移り、ここで教授となりました。倉地 私は、1970年にポスドクフェローとして米国に渡り、結果的に30年以上米国の主要大学で研究を行い、教鞭をとる人生を送りました。10年前につくば市にある国の研究センター所長への就任依頼を受けて帰国しましたが、昨年退職し、春に九州大学に赴任してきました。ソフロニス お互い、似たような経歴ですね。倉地 それでは、I2CNERについて伺いたいと思います。まず中・長期的な目標を教えてください。ソフロニス I2CNERは基礎科学に取り組む研究所です。これは私たちのミッションの一つです。そして基礎科学を通して、環境調和型で持続可能な社会の実現に向けた課題への解決策を提示し、社会に貢献することを目指します。直近の目標としては、日本、米国、ヨーロッパを含む国際社会に対し、安全な水素社会実現のための国際的な基準を示すことなどがあります。例えば日本の自動車メーカーは、2015年には燃料電池自動車を市場に出したいと考えていますが、そのためには、材料の適切性や強度に関する基準が必要です。その基準を示すことは直近の目標の一つです。倉地 水素ステーションなど、水素社会の実現には社会インフラも必要だと思いますが。ソフロニス 水素は造り出すとともに、これを家庭などへ供給しなければなりません。輸送のシステムが必要なのです。日本も米国のエネルギー省もこのシステムに取り組んでいます。伊都キャンパスにある(独)産業技術総合研究所のHYDROGENIUS(水素材料先端科学研究センター)では、水素を輸送するためのインフラの材料について研究しています。将来、家庭では天然ガスの代わりに水素を使うようになるでしょう。インフラには大きな投資が必要ですが、将来のためには必要な投資特別対談 ペトロス・ソフロニス×倉地幸徳Petros Sofronis九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(I2CNER)所長イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校教授

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