http://www.kyushu-u.ac.jp-kyudaikoho_73
6/40

5Kyushu University Campus Magazine_2011.1なのです。もう一つ重要なことは、水素に関する市民の理解を高め、信頼を得ることです。米国のエネルギー省はこのための充実した社会教育プログラムを用意しています。ここI2CNERでも、社会に対してわかりやすい言葉で説明を行っていくつもりです。それから水素の製造と利用もさることながら、地球温暖化という大きな問題への対処としては、やはり二酸化炭素の排出削減の問題にも取り組まなければなりません。二酸化炭素の回収や貯留なども、I2CNERで我々が取り組む課題です。米国流のアカデミックカルチャーを採り入れる倉地 次は研究所の運営等について伺いたいと思います。まず研究者のリクルートについてです。I2CNERには世界一流の設備がありますし、若い研究者にとってはとても魅力的だと思います。しかしながら、真に世界に誇れる一流の研究機関となるためには、シニアレベルの研究者も集まってくるようでなければなりませんね。 ソフロニス シニア研究者ということであれば、私自身を例にとってみましょう。この壮大なプロジェクトに私が惹かれたのはどうしてでしょうか。それはHYDROGENIUSの存在です。HYDROGENIUSでは世界トップレベルの研究が行われており、それはシニア研究者を惹きつけるものです。研究環境は重要な要素です。私たちシニアの研究者は、優れた研究者がいて、目的に向かって真剣な研究を行っているグループに参加したいと思うものなのです。もう一つ、九大とイリノイ大学との連携についても強調しておきたいと思います。ご存知のように、イリノイ大学には世界トップレベルの工学系の学部があります。これからは、夏季休暇やサバティカルリーブ(長期有給休暇)を利用して、多くのシニア研究者が九大にやって来るでしょう。九大とイリノイ大の研究者が共同で研究できる環境づくりが始まるのです。そして、こうした取り組みは、数々のワークショップや共同刊行物を通じて世界に発信されることとなります。倉地 研究環境について言えば、日本と米国の大学における大きな違いは何だと思われますか? ソフロニス 日本では准教授から若い助教まで、教授が率いるグループ内で「教授のために」研究する様子が時折見られますが、このようなことは米国では見られません。倉地 そういった傾向は、以前は顕著に見られました。まず教授がいて、准教授がいて、助教がいて、それがピラミッドのような構造になっていました。近年ではかなり様子が変わってきて、もっと柔軟な構造にはなってきていますが…。ソフロニス I2CNERでは、そのようなやり方は避け、米国流のアカデミックカルチャーを採用します。米国では、研究者は将来性を買われて雇われます。教授の研究を手助けするための存在ではありません。所属する研究所や学部をこれまでとは違った方向にまで導く可能性がある、新しい力なのです。I2CNERでも、若い研究者をそのように位置づけたいと思います。学生達は次の世代を担う研究者倉地 若手の研究者にも、独自の研究を行えるようなスペースを与えるということもその一つですか。ソフロニス その通りです。若手研究者は独自の研究を行うとともに、将来のビジョンを持っていなければいけません。私がこれまで九大で出会った若い研究者の中には、研究についての5年後のビジョンを言えない人が何人かいました。大変ショッキングなことです。というのは、米国の大学では5年後のビジョンがない研究者は採用されませんから。倉地 同感です。私も研究者人生の半分を米国で過ごし教授になりました。すべて自分でやらなくてはなりませんでしたが、自分が真にやりたい研究を行うことができました。ソフロニス 教授は若手研究者の手本であり、指導者です。教授は若手研究者が独り立ちできるよう指導し、サポートします。もちろん、共

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です