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23Kyushu University Campus Magazine_2011.3 近年、若手研究者の「内向き志向」がグローバル時代の日本の科学の未来に暗い影を落としている。そのような時流の中で、博士後期課程学生を教育対象とする本拠点では、世界を活躍の場とする若手研究者の育成を目指している。「経験は最良の教師である」は、19世紀の歴史家カーライルの言葉であるが、平成19年のプログラム開始以来、実践的な国際教育活動を数多く展開してきた。世界第一級クラスの研究者による集中講義 この教育プログラムでは、世界第一級クラスの研究者により英語のみで行われる集中講義を開講している。毎年6名以上招聘される講師の出身国は北米、欧州、アジアと様々だ。この講義シリーズのほかに、外国人招聘研究者によるセミナーも数多く実施しており、平成22年、その回数は82回を数えた。英語教育と国際舞台での 自己発信 国境を越えて切磋琢磨する理工系の研究者には、高度な言語能力と自己発信能力が必要不可欠だ。本拠点では、独自の科学英語教育プログラムを通して、論文執筆、プレゼンテーションだけでなく、博士学生の英語力の底上げを図ってきた。英語教育以外にも、本学カリフォルニア・オフィスの全面支援を受けて、3~4週間の米国での海外武者修行プログラムを実施しており、毎年10人以上の院生が参加している。 培われた英語力を活かし、自分の研究を国際発信する機会も非常に多い。米国のUCLA、韓国の延世大学校をはじめとする海外有力大学の研究グループとの合同シンポジウムでは、学生間の研究交流も推進してきた。そして、ノーベル賞受賞者を含めた世界的な研究者を招聘しての国際シンポジウムや、若手研究者主体の国際ワークショップなどでも、発表の場を設けてきた。国際学会参加助成も積極的に行い、14カ国に100名以上を送り出してきた。外向き志向の若手研究者の 育成を目指して 国際教育活動を通して蒔いてきた「外向き志向」の種の芽は、確実に成長している。コース生の中では本拠点の連携先である海外の大学や企業で数ヶ月の研究留学やインターンシップに参加し、博士号取得後、海外の大学のポスドクへの道を志望する学生も増えてきた。現在、米国オハイオ州のボーリング・グリーン州立大学で学術研究員として勤務しているコース修了生の嘉部量太さんは、現地の日本人留学生が少ない原因として、日本の研究環境、就職環境が充実しているため、他人と違うことをし、自らの道を切り開きたいという熱意に欠けると感じており、このように語ってくれた。「留学が必ずしも良いことばかりとは限りませんが、日本とは異なる環境に身を置くことで刺激を受け、自分のあり方を見つめ直したり、新しい知識を得たり、ネットワークを作ったりと得られることも多いと思います。」 プログラムは最終年度を迎えるが、世界に飛翔する若手研究者を多く輩出することで、日本の科学の未来に一石を投じたい。 (「未来分子システム科学」 グローバル COE事務室広報担当)「外向き志向」の若手研究者を育成して国際教育活動グローバルCOE「未来分子システム科学」(拠点リーダー:君塚信夫工学研究院教授)TOPICSTOPICS海外武者修行プログラムで現地の学生との交流平成19年度 UCLA との合同シンポジウムにてテキサス大学のアンスリン教授の講義風景

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