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10Kyushu University Campus Magazine_2011.5北園 孝成 す。さらに動脈硬化が進むと血管が詰まって脳梗塞を発症します。脳梗塞には、心臓に問題があって、心臓の中にできた血の塊が脳血管に飛んでそれを詰まらせてしまうタイプもあります。一方で、くも膜下出血は遺伝的要因が強く、動脈瘤と呼ばれる脳血管のこぶのようなものができて発症します。それぞれの病型によって治療法が違いますが、緊急で入って来た患者さんに対して、短い時間でこれらの病型を診断し、適切な治療を選択する必要があります。南里 最近、特にテレビやポスターで、「脳卒中の症状が出たらすぐに病院に行くように」という啓蒙の広告が目立つ気がするのですが、何か意味があるのですか。北園 昔は脳卒中で倒れたら動かすなと言われていたのですが、最近は、初期の段階でしっかり治療すれば、回復率も高いということがわかってきて、できるだけ早く病院に来てほしいと呼びかけています。しかし、そんなに早く来られていないのが現状です。平成17年に、t-PAという血栓を溶かす薬が日本でも認可されたんですが、この薬は病気が発症して、3時間以内に投与しなければ効果がありません。病院での検査に30分から1時間程度かかりますから、それを差し引くと発症して2時間以内には病院に来ていただかなければなりません。とにかく早く治療を開始したいのですが、それには一般の方に脳卒中の症状を理解してもらわなければならないので、「日本脳卒中協会」を中心に啓蒙活動に力を入れているのです。回復のメカニズムが、 注目されている脳卒中研究。南里 現在、脳血管のメカニズムはどんなことがわかっているのですか。北園 脳循環の基本的なメカニズムや、いろんなリスクが加わって、血管に動脈硬化を主体とする障害が起きるその発症のメカニズムは、分子レベルまでわかってきています。しかし、脳梗塞が起きた時、壊死した組織に神経が再生したり、血管が新生してきたりすることがあり、修復に向けたメカニズムは解明されていないことがたくさんあります。脳が障害されるメカニズムにもまだわかっていないことはありますが、最近は、回復に向けたメカニズムに、研究の視点が移ってきている気がします。脳卒中の症例を集めた1万件のデータベースをゼロから作成。南里 ところで、先生が作られた「福岡脳卒中データベース」についてお聞きしたいのですが。北園 はい。平成19年6月にスタートしたシステムですが、準備に入ったのは、平成13年。スタートするまでに5〜6年要しました。南里 どのような準備をされたのですか。北園 参加いただく施設への説明や、倫理委員会で承認してもらうといった手続き上の準備もありましたが、データベースシステムもゼロから作りました。このソフト開発にも時間がかかったんです。久山生活習慣病研究所にバックアップしていただき、株式会社NTTデータと共同で開発しました。1000項目をこえる入力項目の選択や、指紋認証で自分のパ福岡脳卒中データベース(Fukuoka Stroke Registry; FSR)概要図

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