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11Kyushu University Campus Magazine_2011.5ソコンからインターネットを介してデータベースにアクセスできるシステムなど、細心の注意を払って進めました。患者さんのデータ入力は、決まったタイミングに決まった情報をとることが大事なので、久山生活習慣病研究所所属の看護師さんや事務職を中心にリサーチスタッフの方々に担当してもらっていますが、そのシステムを作るのも大変な作業でした。南里 このデータベースには、退院した患者さんの追跡データも登録されているとのことですが。北園 はい。私たちが作ったデータベースは2つあります。平成19年6月以降に登録した前向きデータベースと、それ以前のデータを登録した後ろ向きデータベースです。前向きデータベースは、患者さんの同意を得て登録しています。急性期のデータの他に、血液中の血漿蛋白やゲノム等のサンプルも集めています。また、退院された患者さんの状況を電話で問い合わせながら、1年後、2年後、3年後と、長期の追跡調査も行っています。それに対して、後ろ向きデータベースは、過去のカルテ情報からデータを得ていますので、人物を特定できないように個人情報の保護には十分な注意を払って入院時の臨床データを登録しています。現在は90%の患者さんに前向きデータベースへの登録を同意いただいていて、2つのデータベースを合わせると、約1万例のデータを登録しており、さらに登録症例は増えています。南里 後ろ向きデータベースの利用価値はどんなところにあるのですか。北園 実は、ここ数十年で脳卒中の医療は大きく変化してきています。例えば、先ほど話をしたt-PAという薬剤は、脳卒中専門施設で広く使われていますが、逆にこの薬を使わなければどうなるのかといったことは、過去に遡らなければわかりません。そういう意味で、後ろ向きデータベースは、現在と比較できる症例が集まっていて大きな価値を持っているんです。データは診断だけでなく、 病態の解析にも活用。南里 このデータベースは、実際の研究開発でどのように活用されているのでしょうか。北園 企業との共同研究を例にとると、「血液バイオマーカー探索」の研究が進んでいます。三菱化学株式会社と共同で進めていますが、脳梗塞の診断に有用な血液中のたんぱく質を見つけたいというところからスタートしました。日本はMRなどの画像診断が進んでいますが、簡単な採血でわかれば治療のスピードが上がります。また、画像をとる機器が揃っていない場所でも対応できますし、世界的にみれば、医療システムが整っていない国でも活用できます。今は、100種類ほどのたんぱく質の解析が終わっていますが、診断に有用なたんぱく質がいくつか見つかっています。最近は、血液バイオマーカーを診断だけでなく、脳梗塞病態の解明にも活用しようとしています。バイオマーカー探索研究の結果をもとに、基礎的な研究を行うことで脳梗塞の病態を解明し、新たな治療戦略を構築したい

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