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12Kyushu University Campus Magazine_2011.5と考えています。研究と臨床の橋渡しをする「トランスレーショナルリサーチ」に対して、臨床のサンプルデータから、逆に基礎研究にもっていく「リバース・トランスレーションリサーチ」という考え方もあるんじゃないかと思っているんです。将来的には、バイオマーカー探索研究からスタートして、基礎研究を介して、臨床に持っていくことができればと思っています。留学先のアイオワ大学で、 新たな実験系を習得。南里 ところで、先生は留学も経験されていますが、海外で研究してどんなことを得られましたか。北園 私は、大学院時代に、血管の細胞が刺激を受けた時に、細胞の中でおきるシグナル伝達に関する生化学的な研究をしていましたが、血管内の機能にどう関わっているのか、培養した細胞だけでは解明しにくいところがあったんです。留学先のラボでは、生きたままの状態でラットの脳血管の反応性を見る「頭窓法(とうそうほう)」という方法を用いて血管反応におけるシグナル伝達を実証することができました。この新たな実験系に出会うことができたのが一番の収穫ですね。でも、研究を進めていくと、また細かいことを知りたくなりましてね(笑)。培養細胞を用いた生化学や分子生物学の研究も必要だなと改めて思いました。結局、動物を用いた研究と細胞レベル・分子レベルの研究の両方が必要なんですよね。南里 今後、留学されている方にアドバイスなどありますか。北園 あまり構えて考えないこと。他の国の留学生はもっと気楽に来ています。留学するチャンスなんて何回もあるわけではないし、若いうちでないと行けません。アクティブに動いてほしいですね。データベースの活用で、 若手の脳卒中研究が 推進されることを期待。南里 研究をしていてよかったと思われるのはどんな時ですか。北園 やはり、結果が出た時ですね。研究なんて100回のうち99回は失敗です。だから、1回でもポジティブな結果が出ると、とてもうれしい。それと、若手研究者たちの論文が認められるのも喜ばしく思っています。というのも、データベースを作った理由の一つに、若い人たちの研究に役立てばという思いがあったからなんです。私の研究室は脳卒中の臨床を研究しているので、勤務する病院は、急性期の患者を診る非常に忙しい病院が多いんです。それぞれの施設で時間を見つけて臨床研究をやりますが、1、2年で次の病院にローテートするので、研究が断ち切れになってしまうことも少なくなかったのです。そこで、関連している施設のデータを一つに統合してしまおうと考えました。どこにいても、データにアクセスできれば、ローテートしても継続して一つのテーマを研究し、ゴールに到達できると思ったんです。だから、若手の研究者が、しっかりと研究してくれて、学会で発表し論文が認められるのは、本当にうれしいですし、私にとって一つの目標でもあります。データベースを活用して、若手の研究者が医療の進歩に貢献してくれることを期待しています。Profile北園 孝成 インタビューを終え、(左) 南里准教授、(右) 北園教授北園 孝成 教授 プロフィール1984年 九州大学医学部卒業1984年 九州大学医学部附属病院第二内科研修医1986年 九州大学大学院医学系研究科入学1990年 同上修了1990年 聖マリア病院脳血管内科 医員1991年 米国アイオワ大学医学部 研究員1994年 健康保険直方中央病院内科 医長1995年 誠愛リハビリテーション病院内科 医長1996年 九州大学医学部第二内科 助手2000年 九州大学大学院医学研究院病態機能内科学 助手2002年 同併任講師2006年 九州大学病院腎・高血圧・脳血管内科 講師2011年 九州大学大学院医学研究院 臨床医学部門内科学講座 病態機能内科学 教授現在に至る

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