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を通じて実際に学んでもらいます。そして最後に、「共生」の概念を学問的に押さえてもらいながら、それまでの研究を振り返ってもらうというプロセスです。南里 学生は、どのような場所へフィールドワークに行くのですか。飯嶋 その時々に依りますが、去年であれば、私の研究テーマでもある水俣病が多発した地域に行っていました。環境、生業、社会、宗教の4つの班に分けて、それぞれ学生たちに聞き書きをしてもらい、KJ法を使って細かく分析していってもらいました。かなり細かくて大変な作業ですが、これによって学生の感覚も研ぎ澄まされていきます。いかに常識に引きずられず答えを導き出すかという課題がありますが、学生たちには良い経験になっていると思います。南里 参与観察を目的に、学生たちがコミュニティの中に入っていくのは、かなり難しいことのように思うのですが、スムーズに入っていくコツなどあるのでしょうか。飯嶋 私は学生に、どこかに行くときは、まず「挨拶」をしてきなさいと言っています。挨拶する場所は、まず行政。市役所だったり、村長さんだったり、お寺の住職さんだったり、公のトップの方たちです。その次に商店。この2つは情報と人が集まるネットワークの結実点なので、ここに挨拶しておけば、自分たちが来たことが口コミで広がります。そうすると、本調査に行ったときには住民の方に、ある程度認知されていて、こちらからも声をかけやすくなります。また、挨拶に行ったときに、自分が付き合える相手か相性も見てきなさいと言っています。時々、自分が知らない領域だからこそ、そこに行きたいという学生がいます。それは、良い方向に研究が進めばいいのですが、悪い方向に進むと覗き見的な態度になってしまいます。本調査で時間をかけて付き合って、事実誤認はないか、また事実であっても、相手が書いてもらいたくない内容を出していないか確認して論文は書かなければなりません。論文の表現方法に至るまで学問は続いてゆくわけですし、調査が終わった後でも人間関係は続いてゆくわけですから。南里 今の九州大学の学生にどんなことを求めていますか。飯嶋 研究者も社会人なので、社会人としてしっかり生きていける人間になってほしいですね。学生の中には、卒論のテーマを決める時、何をテーマにすればいいのかわからないという学生がいます。それまで、誰かに言われるまま受動的に生きてきたんでしょう。でも、それでは学問になりませんし、社会でも通用しにくいことが出てくるでしょう。自分の持ち味を活かして研究をし、研究を窓口にして社会をつくってゆく。その結果として、自分が生きやすくなるような生き方をしてほしいですね。人間と環境の大局を見渡して、自ら動ける人になってほしいと思っています。KJ法の分析作業の様子左から 南里豪志准教授、飯嶋秀治准教授Front Runner ふろんとランナー 飯嶋 秀治20 Kyushu University Campus Magazine_2012.5自分が生きやすくなるような生き方をしてほしい。

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