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安波 礼之歯学府口腔機能修復学講座 博士課程2年Noriyuki Yasunami九州大学で学び、目指す分野を究めようとする次世代のプロフェッショナルを紹介します。今回は、インプラントの安全性を高めるために、インプラント周囲歯肉の改善の研究に取り組まれている歯学府の若き研究者をご紹介します。さん新しきたち挑戦者13 急速に研究が進んでいるインプラント技術。歯の再生治療法の一つとして注目されていますが、安全性を高めるための課題も残っています。 インプラントと同じような材質を体の中に埋めこむものに、整形外科の人工関節があります。人工関節は、体の中に埋め込んでしまえば無菌状態を保つことができますが、インプラントの場合、顎の骨に埋まった反対側は、口の中に突出していて、無菌状態を保つことができません。口の中は、細菌学的には極めて不潔な場所。菌が体内に入って感染症を起こす心配があります。さらに、感染症が原因で、抜歯した後に周囲の骨が減少し、インプラント治療が困難になるケースもあります。ですから、菌が入らないように、骨や歯肉とインプラントをしっかり結合させて封鎖することが肝心です。 骨の吸収については、抜歯窩(抜歯後の穴の部分)に別の部位の骨などを埋め、人工の粘膜などで封鎖する「ソケットプリザベーション」という方法が使われていますが、完全に骨吸収を防ぐところまでは至っていません。 このような課題に「スタチン」を使ってアプローチしているのが、今回ご紹介する安波さんの研究です。 「高脂血症の治療に使われる『スタチン』という薬があります。この薬は、骨を増やしたり、軟組織(歯茎など)の性質を改善したりする能力を持つことがわかっていて、私たちの研究室では、これを顎の骨や口腔軟組織に応用しようと研究を進めています。『スタチン』を投与することで、骨や軟組織の質や量を改善し、感染や骨の吸収を抑えようというものです。そのなかで私は、口腔軟組織に関する研究を進めています」 現在は、「スタチン」を加えて細胞を培養し、その増殖率や接着強度の調査を進めているとのこと。 「増殖率のアップは、細胞の育つスピードが速くなったことを意味し、インプラントによる傷の治りも速くなります。また、接着強度が強くなれば、治癒力の高まりが期待できます。歯の再生治療法として注目されるインプラント。口腔軟組織における「スタチン」の影響を研究。ばっしかKyushu University Campus Magazine_2012.5 21

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