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魚住 隆行システム生命科学府 博士課程1年Takayuki Uozumi九州大学で学び、目指す分野を究めようとする次世代のプロフェッショナルを紹介します。今回は、研究を始めてわずか3年で、権威ある学術科学雑誌「Nature」の姉妹誌、オンラインジャーナル「Scientific Reports」に論文が掲載された生物科学分野の若き研究者をご紹介します。さん新しきたち挑戦者14 タンパク質は、あらゆる生命現象に関わる生物にとって最も重要な物質です。生物のさまざまな反応を媒介し、外界からのシグナルを伝達する役割を担っています。しかし、生きている生物の体内で、活性化を可視化することは技術的に大変困難なことでした。 今回ご紹介する魚住さんは、「線虫C.elegans」という生物を使って生きている個体でタンパク質の可視化に成功。その成果が国際的な総合科学雑誌『Nature』の姉妹誌となるオンラインジャーナル『Scientific Reports』に掲載されました。権威ある学術誌に、博士課程1年生の論文が掲載されるのは非常に稀なことです。 魚住さんがモデル生物として選んだ線虫は、高等生物と同様の生命現象を多く持っています。さらに、体が透明であることから細胞観察に適しています。また、タンパク質は、さまざまな生物種に保存され、重要な働きをしている「Rasタンパク質」に着目し研究を進めました。 「線虫は、嗅覚を伝えるしくみが人と似ています。さらに、嗅覚の感覚神経で、Rasタンパク質が匂いシグナルを伝達するために重要な役割を担っていることがわかっていました。そこで、Rasタンパク質の活性状態によって蛍光が変化するイメージング分子“Raichu-Ras”を線虫に入れて、Rasタンパク質の活性変化を観察しようと考えたのです」 実験では、タンパク質の活性変化が非常に小さいため、その微妙な変化を捉えるのに苦労したと言います。 「カメラの感度を変えたり、画像処理ソフトの演算方法を工夫したり、ノイズを減らす方法を試みたり、試行錯誤する毎日でしたね。ですから、成功した時は本当にうれしかったです。誰も知らなかったこ博士課程1年生で、権威ある科学雑誌に論文が掲載。微妙なタンパク質の活性変化を捉えるのに苦労。生きた線虫でタンパク質の活性変化の可視化に成功。学のい。※17月6日に行われた記者会見の様子Kyushu University Campus Magazine_2012.7 13

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