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新しきたち挑戦者15 経済学にはマクロとミクロの領域があります。マクロ経済学が、国家や国民、市場といった大きな視点から経済のメカニズムを研究するのに対し、ミクロ経済学は、個人や企業などの個別的な経済活動から市場のメカニズムを分析します。このマクロとミクロの研究には隔たりがあり、実社会における経済を厳密に捉えるのは難しいといわれてきました。しかし近年、マクロとミクロをつなぐ〝メソ〞レベルの研究が注目されています。 今回ご紹介する尾下さんは、メソレベルでの産業構造の解析手法の開発に取り組んでいます。数学の分野であるスペクトラルグラフ理論と経済学の分野である産業連関表を使った産業連関分析を融合して、新しい産業クラスタリング手法を開発。原油の輸入価格の上昇やCO2排出量の削減が、どのような産業に影響しどう伝播しているのかを分析しました。まず伝播のキーとなる産業や重要なサプライチェーンを特定。さらには、問題解決を効果的に行うための産業グループを検出する新たな産業構造解析モデルを開発しました。 「原油を例にとれば、輸入価格の高騰は、電力など、直接、原油を投入する産業はもとより、電力を使う下流産業まで影響します。入口の産業だけが低負荷のものをつくっても、下流産業がそれを使わなければ効果がありません。影響やCO2の削減ポテンシャルがある産業グループを目に見える形にして、グループ全体で取り組めば、より効果的なのではないかというのが研究のモチベーションです。さらに、恣意的に把握していた産業間のつながりを、定量的に把握する技術を確立すれば、さまざまな分野で応用できると思っています」 尾下さんは、日本学術振興会の特別研究員DC1に、経済学府では十数年ぶりに採用されました。海外の学会での発表や、国際的な学術雑誌に論文が掲載された実績が認められメソレベルでの新たな産業構造の解析手法を開発。産業連関表を使って、産業間の波及効果を捉える。経済にとらわれずに、広い分野から問題点を抽出。※しいげるりたい。Kyushu University Campus Magazine_2012.9 11

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