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て、全国に拡がりを見せています。谷村 この技術の将来的な可能性についてはどうお考えですか。古川 スマートフォンの急激な普及に伴い、モバイル通信トラフィックは毎年2倍の勢いで増大していると言われています。5年後には全世界の携帯電話の基地局の9割がスモールセルになると言われています。私たちの技術は、要するにスモールセルを簡単に繋げてビッグセルにするための技術で、着眼点のユニークさは他に比類のないものと自負しています。世界的に見ても我々と同様の技術を保有しているところはなく、優位な位置にいると思っています。谷村 先生は、民間企業に勤めた後に大学に移られたわけですが、その理由や、企業と大学の違いなど教えていただけますか。古川 企業にいるときは、この研究にフォーカスしたくてもできない環境でした。それでどうすべきか考えていたところ、九州大学とご縁があり、研究のチャンスをいただいたのです。大学の良いところは、誰からも制限されることなく自由に研究できること。研究費は自分で取ってこなくてはいけませんが、研究は思う存分できます。谷村 先生の研究室の大学院生たちはどのような研究をされているのですか。古川 メインは、この技術のブラッシュアップですが、他にこれを使ったさまざまなアプリケーション開発も行っています。「PCWL-0100」の中味はパソコンなのでいろいろな機能を付けられます。例えばカメラを付けて画像認識エンジンを搭載すれば、レストランにいる人の数をカウントし、混雑具合を数値化するようなサービスも実現できると思います。私は、このような位置と時間に連動したダイナミックな情報サービスに可能性を感じていて、研究もそちらの方にシフトしていきたいと考えています。谷村 先生の研究は社会と強く結びついていますが、実学と基礎研究については、どのように考えていらっしゃいますか。古川 私自身は、実学と基礎研究に境界はないと思っています。実は、通信業界の技術をリードしているのは「標準化」なんです。企業研究者の多くはまずは特許、それから標準、最後に学会というステップを踏みます。アカデミアが多谷村 福岡市の天神地下街では、「PCWL-0100」を利用して、全域がWi-Fi空間化されたそうですが、何個置いてあるのですか。古川 地下街片道600mに14〜15個、両方で約30個が置かれています。これでほとんどデッドスポットのないWi-Fi連続空間ができています。天神地下街では電波がどこでも3本立っていると、市民の皆さんに喜んでいただいているのがうれしいですね。谷村 他にはどのような場所で活用されているのですか。古川 福岡県では、キャナルシティ博多やベイサイドプレイス博多、県外では和歌山県のリゾートホテルでも活用いただいていインパクトを与える研究・開発を成功させるには人のネットワークが重要Kyushu University Campus Magazine_2012.11 9天神地下街に貼られているポスター。「PCWL-0100」が地下街に置かれ、日本最大級のWi-Fiストリートが誕生した。

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