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い学会は何をやっているのかというと多くは標準化で起こっていることの後追い研究です。これは、ここ20年で起こった通信業界のパラダイムシフトと言えるでしょう。残念ながら標準化は企業がお金をかけてリードしている場合がほとんどなので、アカデミアが入る余地はあまりありません。ですから私たちは、自分たちで作って実証し、ビジネスとして成立させることでデファクト化を目指すことにしました。最初は予算がなくて大変でしたが、積極的な人的ネットワークの構築が功を奏して、福岡県と文科省の支援をいただくことができました。それまでに7年かかっています。やはり、社会に対してインパクトを与えるものを作るには、研究だけでなく人とのネットワークが重要ですね。この研究を通じて学ばせてもらいました。谷村 現在の大学教育については、どう思われていますか。古川 今、大学院システム情報科学府では、非常におもしろい試みを行っています。プロジェクトベースですが、アントレプレナーシップ教育を意識した新しいカリキュラムを取り入れ、技術を教えるだけでなく、ベンチャーを起こして技術をどう事業化するかといったトレーニングを行っています。学生も目を輝かせて取り組んでいますよ。スタートしてまだ2、3年ですが、今後、こうした経験を積んだ卒業生たちが成果を社会に還元していってくれるのではないかと期待しています。谷村 最近は、学生の気質が変わってきたと言われますが、先生はどのように感じられていますか。古川 二極化している気がしますね。総じて言えば、九大の学生はおとなしい。でも、一部の学生はたいへんアグレッシブです。家の中でtwitterやFacebookをやって社会と関わっているように思っている学生もいるようですが、社会はそんなに甘いものではありません。人とコミュニケーションをとるスキルが必要で、それが不足しています。世の中で何が起こっているのか、今の日本を肌で感じるような経験をすることが大切だと思います。谷村 最後に九州大学の学生の皆さんへメッセージをお願いします。古川 専門分野を勉強するために入学しているので、まずはその基礎を学ぶこと。当たり前ですが、大学時代は高校時代より何倍も勉強しなくてはいけない期間なのです。ただし、「勉強」にはいろいろな意味が含まれています。人とのネットワークを作ったり、世の中を知るといったことも大切な勉強のひとつです。社会には、自分とは全く違う価値観を持つ人がたくさんいます。そんな人たちからもたくさん刺激を受けてほしいですね。また、就職も関心事だと思いますが、今の時代、一生同じ職場で働き続けることほどリスキーなキャリア選択はないのではないでしょうか。そうではなく、3年なり5年なりの期間で何を達成し次のキャリアへと繋げるかを考え、就職先を選んで欲しいと思います。このような考えを持っていれば、この瞬間何を頑張れば良いかが自ずと見えてくると思います。若い人たちの覇気のなさを見るにつけ、我々日本人は自立心と主体性を失いつつあるのではないかと心配になるときがあります。学生時代にどんどん新しいことにチャレンジして主体性と自立心を養って欲しいと思います。左から 谷村禎一准教授、古川浩教授Front Runner ふろんとランナー 古川 浩主体性を持って新しいことに挑戦し続けてほしい今、社会で起きている事を肌で感じて学んでほしい10 Kyushu University Campus Magazine_2012.11※1 セル=基地局から電波が届いて通信ができる範囲。※2 ホップ=ある中継無線機から次の中継無線機へと電波を中継する処理のこと。

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