http://www.kyushu-u.ac.jp-kyudaikoho_84
12/40

九州大学では、専門分野が細分化するなかで「知」の統合を図る目的で、3年前に「統合新領域学府」を開設しました。その専攻の一つに、「ユーザー感性学」があります。これまで科学という土壌に乗ることがなかった「感性」にアプローチした注目される学問です。今回ご紹介する李さんは、その感性科学コースに在籍。生理的指標を用いて感性を客観的に捉える研究に取り組まれています。 李さんの研究は、光と瞳孔の関係を科学的に追求したもので、研究の背景には「光の非視覚作用」があります。 人間の眼球には、物を見る以外の目的で光を感受する細胞があり、明暗の変化に応じて1日の体のリズムの調整や瞳孔の対光反応などに関連しています。これが非視覚作用です。 これには、桿体細胞と錐体細胞のみが寄与していると思われていましたが、2000年にメラノプシンという光受容タンパク質が網膜の神経節細胞内に存在することが発見され、非視覚作用に深く関与していることが明らかになりました。このメラノプシン遺伝子には、いくつかの 多型が存在し、季節性感情障害などの関連も報告されています。しかし、瞳孔反応などの非視覚作用との関連はあまりわかっていませんでした。そこで李さんは、光の明るさを変えながら、メラノプシン遺伝子多型と瞳孔の対光反応の関係を明らかにしようとしました。また、メラノプシンが 短波長の青色光に強く反応することから、光の強度だけでなく異なる色光との関連も調査することにしました。結果、メラノプシン遺伝子多型と瞳孔の対光反応には関係があり、短波長の強い光において遺伝子多型の差が見られることなど、いくつかの新しい見解を示すことができました。また、メラノプシンの研究は動物実験によるものがほとんどですが、李さんは人間を対象に実験。その実験プロセスも注目され、今年9月、日本時間生物学会学術大会の優秀ポスター賞を受賞しました。 「今回は瞳孔との関係しか見ていな人の感性を科学的に研究する「ユーザー感性学」。メラノプシン遺伝子多型と瞳孔の対光反応の研究で、学会のポスター賞を受賞。※1※2※3※4※5かんたいさいぼうすいたいさいぼう李 相逸統合新領域学府ユーザー感性学専攻 博士課程2年統合新領域学府ユーザー感性学専攻 博士課程2年LEE Sang-ilLEE Sang-il九州大学で学び、目指す分野を究めようとする次世代のプロフェッショナルを紹介します。今回は、今年9月に開催されました第19回日本時間生物学会学術大会で、優秀ポスター賞を受賞した韓国出身の若き研究者をご紹介します。さん新しきたち挑戦者16第19回日本時間生物学会学術大会にてKyushu University Campus Magazine_2012.11 11

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です