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シリーズインタビュー/安達 敏昭九大人6 Kyushu University Campus Magazine_2012.11九州に生まれたことにも感謝しています。ー安達さんは、竹久夢二をどのような人だと捉えておられますか。安達 竹久夢二は、絵画で有名ですが、油彩をはじめ、水彩、イラスト、デザインなど、幅広いジャンルの作品を残しています。また、文学にも長けていて、俳句、和歌、詩、散文など、こちらもジャンルの幅広さに驚かされます。私が夢二を思うときにイメージするのは富士山。富士山のように広い裾野を持ち、その上に彼の美的感性がとりわけ高くそびえ立っているように思うのです。また、その華やかな美的感性を裏付けているのは、夢二の知的感性です。好奇心や探究心が旺盛だった夢二は、常に自分を向上させるために精進する気持ちを忘れなかったといいます。画家やデザイナーに留まらない知の巨人としての夢二に、とても魅せられますね。私は夢二に導かれるようにして研究を進めてきましたが、夢二のものの考え方や視点を知る中で生きるヒントを与えてもらったように思います。ー夢二も、生活の中で美術を楽しむ思考を持っていたようですし、好奇心が旺盛なところなど、安達さんと夢二は似ていらっしゃいますね。安達 確かに、自分でも似ているなと思うところがあります(笑)。縁があったというか、出会うべくして出会えたとしたら嬉しいことです。ー最後に、九州大学の学生の皆さんにメッセージをいただけますか。安達 百周年を迎えた九州大学が掲げた「知の新世紀を拓く」というメッセージを見て思ったのですが、竹久夢二の作品や考え方は、新しい知を開拓する上で大きな刺激になるように思います。ぜひ、学生の皆さんにも、もっと夢二に興味を持ってもらいたいですね。そして、夢二のような絶え間ない好奇心や探究心を持って、自分なりの美学を追求していってもらいたいと思っています。安達 研究は、自分の好奇心の赴くまま進めてきたので、苦労と感じたことはありません。私自身は、自分のことを研究者とは思っていないんですよ。追っかけみたいなものですかね(笑)。だから本を通して、自分が夢二の足どりを辿るプロセスを、読者の方にも一緒に楽しんでもらえたらと思っています。ー本を読ませていただきましたが、夢二に寄り添うように書かれた安達さんの本は、大変読みやすかったです。安達 研究を本にまとめるにあたっては、大学や会社で経験したことが大変役に立ちました。夢二の研究は、まず文献を調べたり資料を集めたりして情報を収集します。その後、情報を選択・分析し、最後に順序を組み替えるなど再構築して文章にします。このプロセスは、大学の研究で実験し、データを分析し、レポートを作成した過程や、仕事で部品を設計し、組み立て、報告書としてまとめた過程に似ています。知らず知らずのうちに、大学の勉強や会社の仕事を通して、説得力のある文章を書くノウハウを身に付けていたように思います。また、私が九州の人間でなかったら、このような視点で夢二を追うことはできなかったでしょう。夢二は画家やデザイナーの域を超えた知の巨人。絶え間ない好奇心や探究心を持って自分の美学を追求していってほしい。夢二は、絵画や詩など美しい作品を残したが、その美しさは彼の知性が裏付けしている。彼の思考や視点にも注目してもらいたい。

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