http://www.kyushu-u.ac.jp-kyudaikoho_85
10/36

RSA安全性の検証・評価が未熟既存暗号技術新しい暗号技術安全性の評価法がほぼ確立将来において普及が期待暗号解読の世界記録達成安全性の技術的な根拠≒次世代暗号の標準化に貢献!≒一方、双線形性ペアリングでは、最新のコンピュータと解読技術を用いて、その暗号に対して想定される攻撃者の解読能力を公の場で徹底的に議論します。議論しながら安全性の高い暗号をつくっていこうとしているのです。今回の私の研究成果は、暗号解読の世界記録を達成しただけでなく、「この桁数を解読するのに必要とされる最新技術の限界を見積もり、解読不可能に近づけるにはこのくらいの桁数が必要」といった予測を可能としました。つまり、安全な暗号の選択や適切な鍵の交換時期を見積もるための技術的な根拠になります。安全な暗号技術を利用するための根拠として活用されることで、次世代暗号の標準化に貢献しているのです。今回の得られた結果から、1011桁のペアリング暗号は今後20年間は安全という見積もりを得ました。都留 研究をする上で苦労されたことなどありますか。高木 私の研究は、数学と工学の境界領域なので、研究成果をどちらの分野で発表するか悩むことが多いです。数学のジャーナルに投稿したら工学の領域だとリジェクトされ、工学のジャーナルに投稿したら数学の領域だとリジェクトされるといったことがありました。新しい研究分野なのでどこに足をおろすか難しいところでした。しかし、最近は暗号関係の新しいジャーナルが創刊され始め、新しい学術領域として確立する方向となりました。都留 今後、研究をどのように発展・展開していこうとお考えですか。高木 IT技術が急速に進むなかで、暗号も第4世代の技術にとりかかる時期に来ているように思います。「半導体の集積密度は18〜24ヶ月で倍増する」というムーアの法則は、2010年代には通用しなくなって集積度は落ちると予想されていましたが、現段階では上がり続けています。コンピュータのスピードが上がれば、解読者のスピードも上がるわけで、さらには、大規模な量子コンピュータ(※8)などが実用化されれば、全く新しい数学を使った暗号が必要になってきます。ですから、社会がどのような方向に動いていて、どんなニーズがあるのかしっかり把握して、時代に合った暗号をつくっていかなければならないと思っています。都留 暗号解読の成功が安全性の評価につながるというのは具体的にどういうことなのでしょう。また、次世代暗号の標準化にどのように貢献されたのか教えてください。高木 「解読した」というと、もう暗号として使えないと思われるかもしれませんがそうではありません。原子力発電でいうストレステストを実施したと思っていただければ良いと思います。暗号の世界Kyushu University Campus Magazine_2013.1 9世界記録を達成した際に使用した最新コンピュータ図2 既存暗号技術と新しい暗号技術の安全性IT技術の発展とともに暗号の進歩も求められる

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です