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都留 ところで、先生は何をきっかけに暗号に興味を持たれるようになったのですか。高木 修士までは純粋数学を勉強していて、将来どうしようかと考えていました。そんなとき、ある本に出会い、暗号の重要性と可能性に気付いたのです。インターネットが普及する少し前で、日本最初のウェブページが発信され始めた時代でした。でも、暗号ができることで劇的に世の中が変わるだろうという予感がありました。自分の数学の知識が使えるし、研究する価値がある分野だと思ったのです。都留 先生は、民間の企業に就職され、後に大学の研究者に移られたとお聞きしましたが、どういう理由で大学に移られたのですか。高木 教育に興味があったのです。私が暗号の研究に取り組み始めた頃、欧米と比較して、この分野では圧倒的に人材が不足していました。暗号の研究を活発に行っていたNTT研究所に就職したのですが、そのとき、この人材不足を解消するには大学での教育が必要だと思い、いずれ大学に移って人材育成に寄与したいと考えていました。都留 NTT研究所時代にドイツに留学され、学位も取得されていますね。高木 NTT研究所に留学制度があったので、暗号の研究で先端を行くドイツのダルムシュタット工科大学に留学し、学位を取得しました。学位を取得したら日本に戻る予定でしたが、准教授のポジションがあって教鞭もとるようになりました。都留 ドイツでも教鞭をとられていたとのことですが、日本とドイツの学生を比較して違いがありますか。高木 ドイツの学生は次から次に色々な質問をしてきますね。また、ドイツの大学は、テストの採点結果を公開して、なぜこの点数を与えたのか学生と議論するシステムがあるのです。学生がもっと良い点数がもらえるはずだと主張してくるので大変でした。ドイツの学生は何においても食いついてきましたが、日本の学生はそれがありません。もっと能動的になってほしいですね。都留 最後に九州大学の学生にメッセージをお願いします。高木 ぜひ、大学時代に海外に留学してほしいですね。そして、大学院でも就職でも、活躍の場をグローバルに考え、人生設計を立ててほしいと思います。海外に行くと日本を冷静かつ客観的に見ることができます。当たり前と思って気づかなかったことにも気づきます。日本人のメンタリティもわかってくる。ぜひ、海外にも目を向けて視野を広げてほしいですね。Front Runner ふろんとランナー 高木 剛大学時代に海外に留学して視野を広げてほしい10 Kyushu University Campus Magazine_2013.1※1 生体認証技術人間の生体的・行動上の特徴に関する情報を利用して個人を認証する技術。※2 電子透かし技術画像や映像、音声等に、人間の目では認識できない微少な変更を埋め込み、その情報を検出する技術。※3 ICカード極薄の半導体集積回路(ICチップ)を埋め込み、情報の記録を可能にしたカード。※4 フォレンジック不正アクセスや機密情報漏洩などコンピュータに関する犯罪・法的紛争が生じた際に、原因究明や捜査に必要な機器やデータを収集・分析し、法的証拠性を明らかにする手段や技術。※5 SSLSecure Sockets Layer:インターネット上で情報を暗号化。送受信を行うプロトコル。※6 RSA暗号桁数が大きい合成数の素因数分解問題の困難性を安全性根拠とする公開鍵暗号。※7 クラウドクラウドコンピュータの略。データを自分のパソコン等ではなく、インターネット上に保存する使い方やサービスのこと。※8 量子コンピュータ量子力学的な「重ね合わせ」を利用して超並列演算を行い、飛躍的能力を持つと期待される次世代コンピュータ。修士時代に暗号によって劇的に社会が変わると予感左から 都留寛治准教授、高木剛教授

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