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体型に満足していますか」などダイレクトな質問を含んでいたので、不快に思われた方がいらっしゃったのです。誰かの手助けになればと始めた研究だったのに、逆に誰かを傷つけているのであれば、研究者としてのあり方を考え直さなければならないと大変悩みました。そんな時に出会ったのがインタビュー調査でした。実際に当事者と顔を合わせて行うインタビューであれば、その人の背景に迫れますし、信頼関係も築きやすいのではないかと思いました。それまで同じ研究室でインタビュー調査を実施した人がいなかったのですが、ちょうど同じ思いを抱えていた院生がいたので、一緒に勉強会を立ち上げ、本や論文を読みあさり博士論文としてまとめました。この論文が認められ、結果として賞もいただくことができ、私はやっと、自分が選んだ道は間違っていなかったと思うことができました。陳 先生のパートナーは、ロンドンパラリンピックの男子車いすマラソンで6位入賞された洞ノ上浩太選手とお聞きしましたが、ご主人のサポートもされていたのですか。内田 アルバイトをしていた障害者スポーツセンターで、先輩から選手のメンタルトレーニングをやってほしいと依頼され、そのとき、サポートすることになったのが主人でした。今は日本パラリンピック委員会からの依頼で他の選手のサポートもしていますが、そのベースの多くは、主人をサポートするなかで培ったものです。陳 どのような方法でメンタルトレーニングを行われているのですか。内田 メンタルトレーニングは、選手のニーズを引き出すことが大事です。方法は色々ありますが、私の場合は、選手と話をして、どんなことを考えているのか、どんな課題を持っているのかを聞き出し、選手自身に考えてもらうようにしています。陳 研究の課題などはありますか。内田 メンタルトレーニング自体が研究にならないことです。実践に入ってしまうと研究ではなく事例になりますし、だからといって陳 先生は、平成20年度日本スポーツ心理学会優秀論文奨励賞を受賞されていますが、受賞の対象となった研究は、スポーツドラマチック体験に関するものですか。内田 スポーツドラマチック体験は、他者や環境などの相互作用も含みますが、この論文では、個人の内面的な意識部分にのみ着目しました。障害を負うと、様々な喪失体験を伴い心にも大きなダメージを負うと言われています。しかし、スポーツを通して新しい自分の能力や目標を発見することで、本人の意識が変わることもあります。そういった障害者個人の認識と、生き方に影響する部分を研究しました。博士論文の中核となった論文です。陳 研究を進めるなかでご苦労などありましたか。内田 アンケートによる大規模調査をしたときに、「こんな質問はしないでほしい」と書かれたことがありました。「あなたは自分のKyushu University Campus Magazine_2013.3 17ご主人・洞ノ上浩太選手。ロンドンパラリンピックの男子車いすマラソンで6位入賞。障害者に寄り添った研究をするためにインタビュー調査を導入左から 陳光斉教授、内田若希講師メンタルトレーニングは選手のニーズを引きだすことが大事

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