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テクノロジーの発展とともに出現した新しい芸術表現形態に「演奏ソフトウェアアート」があります。その特徴は、音とともに視覚的に表現された演奏情報を鑑賞者に提示し、ゲーム感覚で演奏を楽しんでもらいながら、音楽が発生するルールを理解する機会を生み出すところにあります。今回ご紹介する土下さんは、演奏ソフトウェアアートに音群的音楽の表現を取り入れ、その音楽形態によってどのような魅力が付加されるのかを研究。作品を発表されています。 音群的音楽とは、普段、私たちが耳にする音楽とは異なり、リズムやハーモニー、メロディといったものがありません。聞いた瞬間の表面的な音のイメージを捉えた〝音群〞の状態変化を音楽にしたものです。必ずしも楽譜に依存する必要がなく、グラフや図形といった視覚情報で構成することができます。土下さんは、この状態変化をコンピュータグラフィックス上で表現するうえで、Boids理論を応用しました。 「実は、この作品を作ろうと思ったきっかけは、魚の群れの動きをシミュレートするしくみを知ったことにありました。これを音楽に取り入れたらおもしろいのではないかと思ったのです。そこで、Boids理論を応用し、画面内のGUIをマウスで操ることで、魚の群れや音の状態を変化させ演奏を行う『雲霞の如し』という作品を制作しました。その後、この作品で課題となった部分を修正し『げんげ(幻魚)』という作品を完成させました」 結果、音群的音楽が演奏ソフトウェアアートの形態をとることで、①発音のタイミングの認識ができる、②群れの形や動きによる音の予想ができる、③オブジェクトへの愛着が湧き、オブジェクトの動きの結果として演奏が構成される、④パフォーマンスツールとして活用できる、といった4つの魅力が付加される可能性を見いだしました。新しい芸術表現形態、演奏ソフトウェアアート。瞬間の音のイメージを表現する音群的音楽。※1※2雲霞の如し/操作画面土下 竜人芸術工学府 芸術工学専攻 修士課程2年Tatsuto Tsuchishita九州大学で学び、目指す分野を究めようとする次世代のプロフェッショナルを紹介します。今回は、ソフトウェアアートと呼ばれる芸術ジャンルのなかで、音・音楽を構成要素の中心に捉えた「演奏ツールとしてのソフトウェアアート」の研究に取り組まれている若き研究者にお話を伺います。新しきたち挑戦者18って、を。さんKyushu University Campus Magazine_2013.3 19

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