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▲九州大学、ソウル大学校医局間での術前術後カンファレンス▲アジア遠隔医療開発センター(TEMDEC)す。ちょうど留学先で一緒だった仲の良いドクターが、高速ネットワークが韓国で初めて接続される漢陽大学校にいることもわかって、医療チームとしてプロジェクトに参加させてもらえることになりました。ちょうど、小泉内閣の首相官邸がリードする形で「e-Japan計画」が始まり、日本全体が高速通信網を利用した高度情報通信国家の建設を目指し始めた頃でした。また、2002年には、サッカーのワールドカップ日韓共同開催があり、これを機に、日韓を結ぶ超高速インターネット回線が福岡と釜山の間に敷設され、回線容量がそれまでの1000倍になりました。高画質な映像を必要とする遠隔医療技術は、これがブレイクスルーになったと思います。さらに、福岡に大きな中継基地ができたことで、九州大学が遠隔医療分野で重要な役割を担うことになり、私たちの活動も広がっていきました。鈴木 先生の本来の専門は内視鏡とお聞きしましたが、見えないものを遠隔で扱うという意味では、遠隔医療に近いように思います。どこか関係があったのでしょうか。清水 私の専門が内視鏡手術だったことは、遠隔医療の研究を進める上で大変ラッキーでした。皆さんご存知の通り、内視鏡の手術は腹部に5㎜〜1㎝ほどのいくつかの穴を開け、長い器具を差し込んで手術をします。その穴の一つにカメラを入れ、カメラの映像を見ながら手術をしています。ですので、既に遠隔医療に必要な映像のリソースがあるため、映像を映し出す環境を整える必要がなく、活用しやすかったのです。また、遠隔医療のプロジェクトが動き始めた時期と、外科の領域で、内視鏡手術という画期的な手術法が応用され始めた時期が重なったのも良かったと思います。日本で胃癌に対する内視鏡手術の技術が確立されてきていて、九州大学にも、国内外から多くの研究者が見学に来ていました。その中の一人に、ソウルの癌センターから来院していた医師がいて、日韓を結ぶ超高速インターネット回線の話をすると、「ライブ手術」を提案してくれたのです。彼の尽力もあり胃癌に対する内視鏡鈴木 遠隔医療の研究をご専門にされているとのことですが、世界的な動向をお聞かせいただけますか。清水 一般的に遠隔医療と言うと、医師が遠隔操作で患者を診療したり手術をしたりしているシーンを想像されると思うのですが、私たちが現在行っているのは、医師と医師の遠隔医療です。高精細な医療用動画像を配信することにより、新しい医療技術や様々な専門的分野における教育をサポートすることを目的にしています。鈴木 どのようなきっかけで、遠隔医療を研究されるようになったのでしょうか。清水 2000年頃から九州大学は、韓国とインターネットを用いた様々なプロジェクトに取り組み始めました。私は、国際的なプロジェクトに興味があったので、何か関わることができないかと思い、中心となって活動されていたシステム情報科学研究院の荒木啓二郎先生や岡村耕二先生を訪ねたので医師の教育を目的にした「Doctor to Doctor」の遠隔医療システムを研究カメラが結びつけた「内視鏡手術」と「遠隔医療」Front Runner :清水 周次8 Kyushu University Campus Magazine_2013.5

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