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▲ゼミ合宿で出向いた山西省のコークス会社でゼミ生への通訳&説明中石炭は今でも世界の4割以上の電力の燃料として用いられている一番大きな電源エネルギーです。日本はごく最近まで世界最大の石炭輸入国で、30年以上、石炭の国際マーケットの秩序を作ってきました。値決めも日本主導で行われていたのです。ところが、2009年から中国が石炭を輸入し始めて、2011年にはあっという間に日本を抜きました。ドミナントプレイヤーが日本から中国に移りつつあることでこれまでのように放っておいても石炭は安価に安定的な供給を確保できるというわけではなくなってきているのです。米永 先生は、環境産業についても研究されているとのことですが、こちらはどのようなことを研究されているのでしょうか。堀井 環境産業の中でも、私は大気に絞って研究しています。エネルギー消費に起因する環境汚染状況に関する研究と一緒に、環境改善をビジネスとしている産業の動向も探っています。例えば、ESCOという省エネを請け負うサービス事業などです。中国は日本ほど省エネの意識が高くありません。ESCOのようなサービスは、日本の省エネ技術を活かせます。私は、日本の大手メーカーが自社内の省エネノウハウを整理して中国に売り込めば、大きなビジネスチャンスになると思っています。浜瀬 確かに日本にとって良い商機だと思いますが、実現に至っていないのはなぜでしょうか。堀井 現地で見聞きした私の経験からは、そもそも中国語を話せず、現地で孤立してしまったり、中国人と丁々発止やりながらガッツを持って中国に売り込める人材が少ないことにあると思います。米永 やはり、語学とコミュニケーション力が必要なのですね。堀井 大学時代に語学と外国人との付き合い方は勉強しておくべきです。あとはやはりデータリテラシー、正しいデータを集めて自らの論理で考える力を鍛えるべきです。例えば今、日中の関係が冷え込んでいて、中国に対する日本の報道がネガティブに傾いているのも、ビジネスを停滞させている気がします。中国の大気汚染問題も、米永 最初に堀井先生の研究内容についてお聞かせいただけますか。堀井 中国のエネルギー産業、環境産業について、産業データに加え、中国企業などへのフィールドワークの結果も合わせて、その動態を探っています。浜瀬 エネルギー産業は、具体的にどのような分野を専門に研究されているのでしょうか。堀井 専門にしているのは石炭と電力です。計画経済という従来の制度から市場システムに向かう中国のマーケットと企業の動向を探り、また、オーストラリアやインドネシアなど国際的な石炭マーケットの状況も見ながら、日本への影響などを分析しています。米永 中国の石炭の消費量はどのくらいなのでしょうか。堀井 2012年時点で、中国のエネルギーの68%が石炭です。続いて石油が18%、天然ガスが5%。中国の石炭の消費量は、世界の石炭消費量の50%強を占めています。中国のエネルギー産業と環境産業の動態を、フィールドワークで探求。中国の環境対策は、日本にとって商機。Front Runner :堀井 伸浩10 Kyushu University Campus Magazine_2013.7※1

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