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▲ゼミ合宿で山西省の農村を視察した際の集合写真ことは知っておくべきです。 中国の環境汚染が深刻というのは裏を返せば、環境対策が進んでいる日本にとっては、大きなビジネスチャンスのはず。「先進国として」上から目線で持ちかけるのではなく、「私たちのノウハウを提供するから一緒に儲けましょう」というスタンスの方が、中国の人たちは信頼してくれると思います。それなのに環境汚染大国というイメージにとらわれて、環境対策が急速に進む環境市場大国としての中国という認識を持っていないことが誤った戦略につながっている気がします。一番言いたいのは、メディアは中国にネガティブな報道がウケるのでそちらに偏りがちで、それに流されてはいけないということ。真実を把握するためにも、現地でのフィールドワークは大切です。現地の人に話を聞く中で真実に辿りつくことも多いんですよ。浜瀬 具体的に、日本の商機はどこにあると思われていますか。堀井 2004〜2009年にかけて排煙脱硫装置が中国の多くの発電所に導入されました。日本は、ドイツとならんで世界最高水準の性能を持っていたにもかかわらず、価格が高過ぎて、商機を逃してしまいました。それに対して、ドイツはライセンス技術を中国に供与して、中国企業とともに中国市場向けの製品を作っていきました。これによって、中国は世界水準価格の5分の1程度の価格で販売できるようになったのです。日本製より2割ほど性能は落ちますが、8割もコスト減できるのですから問題になりません。 続いて現在は、排煙脱硝装置が導入され始めています。これについては日本もいい位置を占めています。ただ、中国に国産化する動きがありますので、技術をキャッチアップされる可能性はあります。いずれキャッチアップされるのであれば、欧米のようにライセンスを供与することでシェアを広げるのも一つの策でしょう。排煙脱硝装置は今後3年間で急速に導入が進む見通しですから、まさしくそこに日本の商機が転がってるというわけです。浜瀬 しかし、中国と日本の関係が今のような状態だと、日本人への風当たりも強いのではないですか。堀井 そうですね。中国の人たちは政治の動きを気にします。文化大革命時代から、政府の意向に逆らって厳しい立場に立たされた人たちを見てきていますからね。今の日中関係の状況で、中国企業が日本企業と接するのはリスクが高いのでしょう。私のフィールドワークも、ここ数年、中国企業の了解が取りにくくなっています。以前は、日本の技術やエネルギーに中国は何も対策していないように報道するメディアもありますが、意外に、中国は環境対策を行っているんですよ。データを見れば明確で、2006年からの第11次5カ年計画では、経済が10%成長している中で、省エネを19・1%、大気汚染物質であるSO2を絶対量で14・3%も削減しました。もちろん、日本に比べれば大気状態が依然ひどいのは事実ですが、それを改善しようとしている兆しがある政府の力が強い中国。2国間の関係改善が重要。Kyushu University Campus Magazine_2013.7 11※2※3

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