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▲左から米永さん、堀井准教授、浜瀬准教授※1 ESCO…エナジー・サービス・カンパニーの略。省エネルギー効果が見込まれるシステム・設備などを提案・提供し、維持・管理まで含めた包括的なサービスを提供する事業、およびその事業者。※2 排煙脱硫装置(はいえんだつりゅうそうち)…石炭や石油などを燃やしたときに発生する硫黄酸化物〈SOx〉を取りのぞく装置。※3 排煙脱硝装置(はいえんだっしょうそうち)…石炭や石油などを燃やしたときに発生する窒素酸化物〈NOx〉を取りのぞく装置。米永 話は変わりますが、先生が中国の研究を始められたきっかけをお聞かせいただけますか。堀井 大学時代は国際政治の勉強をしていました。その時の指導教授が産業界とのつながりが深く、中国の石炭に関するプロジェクトを依頼されたのです。私は父の仕事の関係で中国に2ヶ月ほど滞在した経験があったので、そのプロジェクトに参加することになりました。卒業後はアジア経済研究所に就職。石炭は重要な資源であるにもかかわらず過去の産業と思われていて、石炭に詳しい研究者が少なかったことが、私にとって追い風になった気がします。米永 先生が研究を続けてきて良かったと思われるのはどんな時ですか。堀井 初めて知る事実の発見が何よりうれしいですね。研究姿勢として、常に通説を疑うようにしています。フィールドワークも仮説を立てて立証するのではなく、白紙で行うことが多いです。無駄もありますが、下手に仮説を立てるとそこに捉われて新しい発見を逃してしまう恐れがありますから。そしてフィールドワークで得た新たな事実を、産業組織論や中国経済論の視点から考察することで、その発見を一般的な知見に高める作業を楽しんでいます。米永 最後に九州大学の学生にメッセージをいただけますか。堀井 九州大学に赴任してきて残念に思うのは、意外に日本人学生と留学生との接点が少ないことです。せっかくたくさんの留学生がいるのだから、グローバルに人的ネットワークを築いてほしい。また、議論を怖がっている学生が多い気がします。私のゼミは留学生も多いのですが、ゼミ合宿では、歴史問題をテーマに「夜の討論会」でタブーなしの議論をしました。大学時代に議論で叩かれ慣れていない人は、社会に出てくじける人が多いようです。学生時代にきちんとしたデータに基づき真実を論理的に紡ぎ出す能力と、それをディスカッションで相手を説得できる力を身に付けて、リーダーシップを発揮できる人材になってほしいですね。ついて学ぼうとする姿勢が中国側にあったので、私の話に価値を感じて受け入れてくれた企業もあったのですが、今は日本から学ぶことはもう何もないという誤った過信に近い自信を持っている中国企業も多いです。米永 今後、日中関係が好転しなければ、エネルギーや環境産業にも影響しますか。堀井 中国企業は急速にキャッチアップしてきていると言っても、その性能はまだ日本企業の製品と比べると見劣りします。どこも低価格競争に陥っているので、日本企業と組んで性能を上げ、差別化する戦略を考えている企業もあると思われます。近年は省エネ・環境対策も地方毎に目標が割り当てられており、私も複数の地方政府の幹部から日本企業と協力するにはどのような手順を踏めば良いのかと尋ねられたこともあります。しかし、日中の国家間の関係が不透明なので公に動けないでいるのだと思います。日中関係が好転すれば、今以上に経済も活性化すると思うのですが、日中の関係が今後どう変化するか、今は読みにくいですね。常に通説を疑うこと。それが、新しい発見につながる。留学生が多い九大の環境を活かし人脈を築いてほしい。Front Runner :堀井 伸浩12 Kyushu University Campus Magazine_2013.7

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