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糖尿病は大きく分類すると、1型糖尿病と2型糖尿病の2種類に分けることができます。それぞれに発症の原因は違いますが、1型糖尿病の患者さんの一部に、糖尿病になる前にインフルエンザのような症状を発症するケースがあります。このことから、ウイルスが糖尿病発症の原因であることが示唆されていますが、その詳細は明らかになっていません。今回ご紹介する三根さんは、このウイルス糖尿病の発症制御メカニズムを研究。今年6月、シカゴで開催されたアメリカ糖尿病学会(ADA)で、初期段階の研究を発表されました。ポスター発表のほかに、オーディオガイドツアーでの発表枠に組み込まれるなど、学会でも注目されています。 三根さんの研究では、抗ウイルス反応に関与するTyk2遺伝子に着目。Tyk2遺伝子欠損マウスを用いた実験により、Tyk2遺伝子は実験的ウイルス誘発糖尿病の感受性遺伝子であることが証明できました。さらに、次に行ったバッククロス(戻し交配)マウスを用いた実験で、世界で初めて、マウスにおける実験的ウイルス誘発糖尿病の自然感受性の系統差を同遺伝子で説明できる結果を得ることができました。さらに、ヒトを対象にした研究でも、同遺伝子がウイルス糖尿病に関与している結果を得ており、マウスとヒトに共通するウイルス糖尿病感受性遺伝子発見の論文を同時に発表すべく準備中です。 「ウイルス糖尿病の発症制御機構の解明は、私が在籍する永淵研究室で約10年引き継がれている研究テーマです。私はアンカーとして、最後の詰めの実験に取り組んでいます。いくつか併行して課題に取り組んでいるので大変ですが、やりがいがあって楽しいです。今後は、より臨床に近い研究につなげていきます。まずはインフルエンザ様症状先行1型糖尿病患者からウイルスの分離を行い、ヘレンコッホの4原則をクリアすることが課題です。将来的には、人に対して糖尿病誘発性のあるウイルスを同定することを目標にしています。ウイルスを同定できれば、それに対ウイルス感染による糖尿病発症のメカニズムを研究。 基礎研究から臨床研究へ。将来は、ワクチン開発による糖尿病予防に期待。※1※2三根 敬一朗医学系学府 保健学専攻 修士課程2年Keiichiro Mine九州大学で学び、目指す分野を究めようとする次世代のプロフェッショナルを紹介します。今回は、ウイルス誘発糖尿病の発症制御機構に関する研究に取り組まれている医学系学府の若き研究者にお話を伺います。さんい。米国糖尿病学会(2013年6月シカゴ)Kyushu University Campus Magazine_2013.7 1320

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