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Kyushu University Campus Magazine_2013.7 7ています。しかし、味覚センサを使えば、味の物差しがあるため例えば3種類でできるのです。これによって企業は、低コスト化、時間の短縮が実現できます。また、海外では医薬品メーカーでの活用が広がっています。子どもが医薬品を飲まない理由の70%は苦いからで、製薬メーカーは苦くない薬を市場に出そうと懸命です。しかし、薬は苦味の切れが悪く、一度飲むと一日中その苦味が残ります。そこで、味覚センサが活用されています。また、音楽の世界で、何百年も前に作曲されたベートーベンやバッハの曲を再現できるのは、楽譜が残っているからです。同じように、食の世界でも数値化したデータで食の楽譜、いわゆる「食譜」を作れば、伝統の味やおふくろの味を後世に残すことができます。今泉 今後はどのように展開しようと考えていらっしゃいますか。都甲 共通の物差しを作って実用化していきたいと思っています。TPPへの加入によって、日本の農産物のブランド化が叫ばれていますが、これも味覚センサで味を保証してあげれば、海外と差別化できるのではないかと考えています。今泉 「味覚センサ」は世界で初めての開発ということで、ご苦労も多かったのではないですか。都甲 特に苦労したとは思っていません。ただ、産学連携で開発したので普段の2倍頑張りました。産学連携の場合、1+1=2ではなく0.5にしかなりません。文化、環境、考え方が違う人たちが組むわけですから、普段と同じやり方で進めても上手くいくはずがない。〝産〞は〝学〞に、〝学〞は〝産〞に寄り添ってお互いを理解し、2倍の力を出して頑張れば、2+2=10になります。10は一人の人間では到底成し得ないパワーであり成果です。今泉 産学連携の成功には、信頼関係が一番ということですね。都甲 それに尽きます。延べ100社以上と組んで仕事をしていますが、やはり、連携して研究を続けていくには、研究への熱意とパートナーへの思いやりが必要です。また、友情関係を維持したかったら、他に浮気したりせず、できるだけ環境を変えないことですね。今泉 先生は産学連携を一歩進めて、大学発のベンチャーを設立されていますが、その経緯をお聞かせいただけますか。都甲 研究のパートナーの独立がきっかけです。でも私は、学生にベンチャーを勧めようとは思っていません。今関わっているベンチャー企業の社長たちは、大手企業に10年以上勤めた人間です。やはり一度は就職して、その後独立した方がいいと思っています。社会のルールや常識を知らなければビジネスは成立しませんから。都甲 例えば今、日本航空の機内で提供されているコーヒーは、味覚センサが作ったものです。コーヒーは、毎年、産地の出来不出来が激しいため10種類くらいの豆をブレンダーがブレンドして作っパートナーとの信頼関係は、産学連携の成功に不可欠ベンチャー設立のメリットはスピード

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