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第21回 日本時間生物学会学術大会2014年11/8(土)~9(日)九州大学医学部百年講堂にて開催予定(事務局:九州大学 大学院薬学研究院 薬剤学分野)。大戸教授はこの大会の会長として、全国の研究者が一堂に会する学会を企画中!九州大学での開催は実に16年ぶりとなります。した。しかし当時、九州大学の大学院は医療薬学の博士課程を持っていませんでした。さらに言えば、私が思うような研究ができる研究室は、全国の薬学研究科のどこにもなかったのです。そのような中で唯一研究できる環境を持っていたのが、愛媛大学の医学研究科でした。それで博士課程は、愛媛大学に進みました。その後、薬学の出身だから薬学を武器にしようと思い、ドラッグデリバリーシステムを研究。留学を経験後、しばらくして九州大学に助手として招聘されることになりました。不思議なことに、今の私の研究室は、博士課程の進路に悩んだとき、もし薬学に進むならこの研究室に入ろうと思っていた研究室なんですよ。二十数年かけて、元の場所に戻ってきたことになります(笑)。回り道をしたように思えますが、私は良かったと思っています。この領域に新しい風を吹き込んでいるという自負がありますし、もしあの時、この研究室に進んで先輩たちと同じことをやっていたら、新しい領域の研究はできなかったでしょう。また、幅広い分野を研究してきましたが、研究は私の中で一貫しています。薬剤学、薬物動態学、薬理学、薬効評価学、ドラッグデリバリーシステム学など、これまで私が研究してきた知識に、時間治療という概念をプラスすることによって一つのシリーズとして体系化することができました。医療薬学と時間生物学の融合です。当時、世界的にもこのような研究を行っている人はいませんでした。坂田  最後に九州大学の学生の皆さんにメッセージをお願いします。大戸 新しい学問領域が体系化されていくのを身をもって経験できたことは、幸運だったと思います。私の研究のプロセスは、周りから見ればムダの繰り返しのように見えたかもしれません。でも私は、人と違う視点の中に新しい発見の糸口があると思っています。皆さんも時代に流されることなく、自分のやりたいことをやってほしいですね。ただし、それには強い信念をもって、より厳しい指導に身を委ねる覚悟が必要です。それを支えてくれるのが人との出会いです。常にチャレンジ精神を持って、自分の進むべき道に邁進してほしいと思います。か、さまざまな疾患において、分子の機構と生体リズムがどのように関連しているのかといったことを明らかにする必要があります。それを明らかにすれば、次の創薬づくりの標的が自ずと見えてくるはずです。水面下で既にいくつか動いていますが、新薬は一生のうちに一つ巡り会えるかどうか。粘り強く楽しみながらチャレンジしていきたいですね。坂田  ところで先生は、どのような経緯で現在の研究に進むことになられたのですか。大戸 私が学生だった約30年前は、医療薬学の研究が始まったばかりでした。そのような状況の中で九州大学は、大学院薬学研究科に医療薬学コース(後に国立大学で初の独立専攻)を作ったのです。私は人を対象にした投薬設計を研究していましたが、薬物濃度を見るだけでなく薬理作用も見て、治験や薬の有効性・安全性に関する研究をしたいと思っていま時代に流されることなく、やりたいことをやるべき。医療薬学の学問領域の確立過程をともに歩む。Front Runner :大戸 茂弘10  Kyushu University Campus Magazine_2013.9▲左から坂田教授、大戸教授しょうへい

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