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▲猿橋賞の授賞式で、賞を主催する一般財 団法人女性科学者に明るい未来をの会・ 米沢富美子会長(写真左)と4  Kyushu University Campus Magazine_2013.9の確立とその展開」ということですが、どのような研究なのか簡単にご説明いただけますか。肥山 私は、原子核の複数の粒子を、多体問題に基づいて数学的に解く研究をしています。例えば、人間社会でも、1対1の関係であれば物事は決まりやすいですよね。ところが、そこにもう一人関わってくるといろいろな思惑が働いて物事が決まりにくくなります。それが目に見えないミクロの世界でも同様にあるのです。それを方程式を使って数学的に解き明かそうとしています。30年前まで、数学的に解くことができるのは二体問題まででそれ以上は難しいと言われていました。しかし現在は、スーパーコンピュータの発展とともに、解き方を開発し続けてきたことで、四体、もしくは五体まで解くことが可能になりました。─ご自身は、研究のどのようなところが評価されて受賞につながったと思われていますか。肥山 一つは、私たちが開発した「少数多体系計算法」をハイパー核物理の分野へ応用したことにあると思っています。ある解き方を考案したとしても、それがどれだけのことを解決し、物事を好転させるかわかりません。重要なのは、周辺を見渡して、それを応用できる問題にアプライし、これまでできなかった物理を解き明かすこと。私は少数多体系計算法をハイパー核物理に用い、結果として、原子核内にある4つの粒子の位置関係を計算で割り出すことに成功しました。また、少数多体系計算法そのものが非常に信頼できるもので予見力があったので、理論的に予測し、その後、それに基づいた実験を実施。実験結果は予測と一致し、私たちの理論を証明することになりました。理論が語れたとしても、そのままであれば〝砂上の楼閣〞でしかありません。実験で確かめることによって初めて新しい発見が生まれます。理論だけでは成り立たない。だからといって、実験だけでは不十分な点もあります。両方のマッチングが大切なのです。このように、理論と実験が一緒になって動いているのが私の研究の特徴で、そういったプロセスも含めて評価していただいたのではないかと思っています。─肥山さんは九州大学の理学部の卒業でいらっしゃいますが、どうして理学部を志望されたのですか。肥山 高校3年生のときに、初めて「原子核物理」について勉強しました。それまで学んできた化学の世界は、目に見えるものを理解しようとしていましたが、原子核は目に見えない。それを数式で表せることを不思議に思いました。それで原子の世界を勉強したいと思うようになり先生に相談すると、理学部の物理学科に行けば学べると教えてくださったのです。それで九州大学の理学部を志望しました。─この度は、「猿橋賞」の受賞おめでとうございます。受賞のご感想をお聞かせください。肥山 「猿橋賞」は、自然科学を志す女性の研究者であれば一度は憧れる賞です。このような賞をいただき、大変うれしく思っています。─受賞の対象となった研究テーマは、「量子少数多体系の精密計算法女性科学者にとって栄誉ある「猿橋賞」を受賞。目に見えない原子の世界に興味を持ち研究者の道へ。〈聞き手〉21世紀プログラム 4年生 阿部 真帆※1

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