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タサイエンスと結びついて大きなビジネスを生み出す可能性があります。しかし認知科学は、厳密な基礎研究に支えられてはいないように見えることもあります。それに対して、私たちが考える知覚科学は、実験心理学や生理学、数理科学の基礎的なバックグラウンドをより重視しています。基礎的な研究の一つひとつのステップを確実なものとし、人の心や体の動きから、確実な知識を構築してゆきたいと思っています。そして将来は、視聴覚のみならず、あらゆる感覚についての研究を視野に入れ、全学的なセンターとして展開したいと考えています。谷村 ところで先生は、『大学生の勉強マニュアル』という本を、同研究院の上田和夫准教授とともに出版されていますね。どのような本なのでしょうか。中島 この本は、「フクロウ大学」という架空の大学が舞台で、学生と教員が学問の自由について考えていきます。本のなかで私どもが学生諸君に伝えたかったのは、「自由を与えられたならば、それをどのように使えばよいのかを自分でしっかり考えなさい」ということです。ほとんどの学生は、大学に入っていきなり「自由」を与えられ戸惑うはずです。私は、戸惑うことこそが、学生にとって大事なことだと思っています。最近は、学生が戸惑わずに効率よく勉強できるように、大学側がシステムを整備することもあるようですが、大学は本来、自分で考えて行動するところだというのを忘れないでほしいですね。谷村 最後に九州大学の学生にメッセージをいただけますか。中島 今の九州大学の学生は、仲間と協力しあって何かを仕上げる能力に大変優れていると思います。しかし、いつの日か、自分一人で走り抜かなければならない時が来るはずです。そのタイミングを逃さずに、自分の志を成し遂げてほしいと思っています。まって活動していることがありました。私は、この冒険心に富んだ研究者を統合すれば、これまでにできなかったことができるようになるのではないかと考えたのです。センターでは、二つ以上の分野で実績を上げている研究者を集め、学際的な研究を日常のあたりまえの活動にしています。 一般的に、学際的な研究を行う場合、まず会議を開いて違う分野の研究者同士が知識を共有する必要があります。しかし当センターでは、研究者が共有する専門分野を手がかりに意思疎通を行うことで、いきなり本質的な部分から研究を始めることができます。つまり研究が面白くなります。これによって、研究の迅速化も期待できると考えています。谷村 センターの研究は今後どのように発展してゆくのでしょうか。中島 知覚心理学から派生した学問に「認知科学」があります。これは、今注目されているビッグデータ解析など、コンピュー「自由」をどのように使うか、自ら考えて行動してほしい。10  Kyushu University Campus Magazine_2013.11▲中島主幹教授(左)、谷村准教授(右)※1 知覚心理学…人間が、物や環境からの情報を   どのように受け取り、どのように意味づけてい   るかを考察する学問。※2 『大学生の勉強マニュアル』…中島祥好、上田   和夫著、ナカニシヤ出版(2006年)。現在は絶   版になっているが、中古本をネットで購入可能。▲研究室には、間違いなく音を出すために音を発生・加工したり、記録・測定したりする機器類が所狭しと並んでいる。※2Front Runner :中島 祥好

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