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木材の施設に滞在していた被験者は、作業後、脳の状態が速やかに回復したことによると考えられます。 唾液アミラーゼは、両施設の被験者とも作業前後での差はありませんでした。しかし、唾液アミラーゼの量は、自然木材の施設に滞在した被験者の方が明らかに高く、交感神経の活動がより活発化したと考えられます。夜の実験では、人が就寝中にかいた汗で、新建材の施設の湿度がぐっと上昇しました。朝、布団をあげると布団の下に水滴がついていたほどです。しかし、自然木材の施設では湿度の変化は比較的小さな傾向を示しました。木の湿度調整機能によるものであり、防カビへの効果も期待されます。2つの建物を造って比較・実験したことで初めてわかることもあり、今後、住宅の質の向上につながればと思っています。都留 品質的に外国産材と国産材の違いはあるのでしょうか。藤本 地域で育ったものがいいと言われていますが、科学的根拠はありません。しかし、外国から日本までの木材の運送に係るエネルギーや労力、コストはとても大きく、CO2の排出量も増えます。環境問題を考えれば地域材を使うべきでしょう。ここでも、付加価値をいかに生み出すかが重要になってきます。都留 長期的なデータの分析も考えられていますか。藤本 工務店の方と検討しているところです。住宅というのは20〜30年間住むこともあるわけですから、そこでいかに良い人生を過ごせるか、健康で快適な生活ができるかが重要です。そのための居住空間であり、内装木材の生産であることを忘れてはいけません。コストが下がるとか、早くできるとかではなく、人が何十年も住む空間に使われることを一番に考えて研究すべきだと思っています。そういった意味でも長期的なデータの分析は重要です。都留 先生はこのプロジェクトにおいてどのような立場でどのようなところを担当されているのでしょうか。藤本 リーダーとして、林業会社都留 実験はどのようにして行われたのでしょうか。藤本 学生 10人を被験者に、昼と夜、2通りの実験を行いました。同じ人に交代で両方の施設に滞在してもらい、その様子を観察するのです。昼の実験は2時間。途中でストレスを与えるコンピュータ作業を行ってもらい、その前後で、脳波や唾液アミラーゼなどを測定しました。夜は睡眠実験です。夜11時に寝て朝7時に起きてもらい、その間の睡眠の質を調べています。都留 実験の結果、どのようなことがわかったのでしょうか。藤本 昼の実験では、新建材の施設に滞在していた被験者は、コンピュータ作業を行った前後で脳波が大きく変化し、作業後に疲れが見えました。しかし、自然木材の施設に滞在していた被験者には変化がありませんでした。これは、自然人が長く住むことを考えた木材の生産を心がけるべきKyushu University Campus Magazine_2014.1  9▲実験棟。左が津江杉内装の施設、右が新建材(木目調壁紙)の施設▲一見すると本物に見える 木目調の壁紙※2津江杉内装小屋の内部木目調壁紙小屋の内部小屋に入るとすぐ、芳醇な杉の香りに包まれる

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