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そして、目の前の技術が変わっ まずは自分の得意分野を見つけて、やりたいことを追い続けること。6  Kyushu University Campus Magazine_2014.12000年頃から、CGと立体作品を同時に制作しています。薩摩切子や大島紬など、CGの真逆にある日本の伝統工芸や匠の技も取り入れています。この技術は、アメリカもマネできません。佐藤 さて、昨年春の紫綬褒章、おめでとうございます。どんなところが評価されたのでしょうか。河口 アートの世界に数理的なものを持ち込んで変えたこと、自己増殖の作品により、科学的に伝統と未来に貢献したことなどを評価いただきました。佐藤 ハイビジョンの研究にもいち早く取り組まれたそうですね。河口 80年代後半から、NHKと一緒にハイビジョンのアニメ、動画作品の研究を始めました。他より5年程早かったと思います。89年にはマサチューセッツ工科大学で世界初のハイビジョン動画作品を発表しました。2005年からは、8Kの研究も進めています。8Kの映像作品は、昨年開催された「瀬戸芸術祭」のプラネタリウムで上映しました。たぶん8Kが一般に普及するのは、2020年のオリンピック以降でしょう。佐藤 常に次世代の技術を見据えた研究を行っていらっしゃるのですね。河口 でも、今は、8Kのディスプレイでは見ることができないので、研究中はたぶんこんな感じだろうと勘を働かせながら進めているんですよ。 芸工大時代から勘で進めることが多かったので慣れていますが。佐藤 先生が常に最先端の場所にいる理由はそういった所にあるのかもしれませんね。現在、霧島アートの森の館長もされているのですか。河口 はい。月1回程行っています。私は、福岡を中心に九州のアートのブランド力を高め、欧米やアジアにアピールすることに興味があります。点じゃなくて線で結ばないと観光客は呼べません。福岡県と鹿児島県が一緒になって長期的に計画すべきだと思っています。韓国や中国に負けない福岡と鹿児島の文化ラインを作りたいですね。佐藤 最後に九州大学の今の学生にメッセージをお願いします。河口 基本的に私はサバイバル戦略です。人と同じことを追いかけても生き残れない。まずは、周囲の友達より自分は何に抜きん出ているかを考え、それを基本に得意な部分を伸ばしていくことです。大事なのは、時代や環境が変わっても自分のやりたいことからブレないこと。また、海外の最先端技術を常に取り入れていかなければ時代に置いていかれます。新しい技術には、子どものような感覚で向き合った方が楽しいかもしれませんね。将来を見据えて、有意義な大学生活を送ってほしいと思います。※1 SIGGRAPH(シーグラフ、Special Interest Group on Computer GRAPHics)…アメリカコンピュータ学会におけるコンピュータグラフィックス (CG)を扱うSIG(分科会)であり、また同分科会が主催する国際会議・展覧会の一つであるInternational Conference and Exhibition on Computer Graphics and Interactive Techniquesの通称。河口氏がエントリーした80年代前半は、日本人の通過はほとんどなく快挙だった。※2 8K…4Kの次のテレビとしてNHKが中心になって研究を進めているスーパーハイビジョンのこと。現在放送されているハイビジョンの16倍となる3300万画素の高精細な映像が特徴。常に次世代の技術を研究昨年は紫綬褒章も受章。※2

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