http://www.kyushu-u.ac.jp-kyudaikoho_92
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は地球に存在する物質がどういう経緯でできて、どうしてここにあるのかを研究している。考古学は、それを人間が少し加工したものを研究対象としているだけ。だから、地球惑星科学の研究手法は、基本的に考古学に応用できる」と言われました。遺跡から出土する土器にしても石器にしても、元の素材は地球に存在する物質ですから、地球惑星科学の分析手法は、考古学に応用できるのです。これまで考古学は、どうしても歴史学的観点から考えることが多かったので、センターでの研究は、私の視野も広げてくれています。またセンターには人類学や歴史学の先生方、さらには昆虫学の先生方もいらっしゃいます。遺跡からは様々な資料が出土しますから多くの分野と連携して研究を進めています。陳 考古学以外の分野の方の見識が入ると、これまでの研究とは違った発見がありますか。田尻 私の場合は、考古学に加えて、地質学、岩石学といった見地をもって研究することで、これまで進んでいなかったテーマの研究に取り組むことができるようになりました。また、最新の機械を導入していただいたことで、今まで測れなかった分析精度まで測れるようになり、これも最新の成果につながっています。現在は青銅器ではなく、石器の斧についての共同研究を進めています。伊都キャンパスの近くに今山という山があります。今山は弥生時代の石斧を作るための石材を採った山でした。これまでの研究では、そこで採れた石材を用いた石斧が北部九州一円に流通したと言われています。しかしながら流通した石斧の石材が本当に今山で採れた石材なのかどうかということを科学的な視点から分析が行われていませんでした。センターで分析したところ、確かに佐賀県の吉野ヶ里遺跡などから出土した石斧は、今山の石材が用いられていたことがわかってきましたが、一部の遺跡から出土した石斧は今山で採れた石ではないことも判明してきており、そこからおもしろい発見があるのではないかと思っています。陳 今後はどのような展開を考えていらっしゃいますか。田尻 考古学の分野では、今やっと、本当に文理融合した研究ができてきています。しかしそれは、それぞれの分野のプロフェッショナル同士の視点があってこそ融合できると思うので、今後も考古学からの視座は大切にしていきたい陳 アジア埋蔵文化財研究センターを新設された経緯をお聞かせいただけますか。田尻 九州大学の特性を活かして、アジアというフィールドを視野にいれた埋蔵文化財の研究を推進する目的で新設され、文理融合した学際的なセンターです。地球惑星科学分野との共同研究を進めていた際、ある先生から、「私たち新設されたセンターで文理融合した研究を推進Kyushu University Campus Magazine_2014.3  15▲考古学資料を科学的に分析。最新の分析機器により高精度の分析が可能に▲九州大学のキャンパス内 にも遺跡が多く、その調 査研究・保存活用も田尻 准教授をはじめとするア ジア埋蔵文化財研究セン ターが中心に進めている

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