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れるよう、着実に研究を進めていきたいです。九州大学には、これまで蓄積されてきた人的ネットワークがありますから、より広いアジアへの展開も可能だと思っています。これは九州大学の強みです。陳 ところで、先生が青銅器の研究を始められたきっかけは何だったのでしょう。田尻 福岡市に飯倉D遺跡という遺跡があるのですが、大学時代にその発掘調査に参加したのがきっかけです。そこで青銅器の生産に使っていた鋳型を発掘したのです。発掘した鋳型には鏡が彫りこまれており、日本で4例目の重要なものだということがわかりました。その時の指導教官から、「自分で発見したのだったら、自分で研究するしかないんじゃないか」と言われ、研究してみようと思いました。大学卒業後、学部時代は九州の発掘調査に多く参加していたこともあり、研究フィールドとして九州がいいのではないかと思っていた際、たまたま現センター長の田中良之先生のお話を聞く機会があり、九州大学の大学院に進学することを決意しました。また、青銅器の技術は中国大陸、朝鮮半島から伝わってきたもので、東アジアという広い視野で研究を捉えなければ、理解は深まりません。そういった意味でも、九州大学は韓国や中国に距離が近く非常に有利です。研究室に韓国や中国の先輩・後輩たちが普通にいて、お互いの研究を話し合いながら学べる環境など、九州大学以外にはありませんから。陳 考古学の魅力はどういったところにあるのでしょうか。田尻 発掘調査が基本です。掘ると必ず何かが出てくるので、それが出てきたときの感動を一度味わうとハマってしまいやめられなくなると思います。それをきっかけに、研究していくことになると思います。ですから一度、発掘調査を体験してほしいですね。それで考古学の魅力がわかると思います。また、私は考古学のフィールドで一番おもしろいのは九州だと思っています。九州大学にはそれを学ぶ環境が整っていますし、考古学に興味がある方はぜひ、九州大学で学んでほしいですね。陳 九州大学で学ぶ学生へメッセージをお願いします。田尻 たぶん学生の多くは、大学で何をしようかと探すことになると思うのですが、それを見つけるヒントがどこにあるかわかりません。私のように目の前にポロッと出てくることもあります。それを逃さないでほしいですね。また私は、考古学が楽しかったのですが、皆さんには大学時代に自分はこれをがんばった、楽しかったと言えるものを見つけて、人に誇れる学生生活を過ごしてほしいと思います。と思っています。一方で、共同研究する相手の研究がわかる環境も作っていかなければならないでしょう。これまで、考古学の分析というと、形を測ったり色を見たりといった外見的な特徴を主に研究してきましたが、今は、それがどういった素材で、どうできているのか、さらには素材の原産地はどこかなど、内面的な研究ができるようになってきました。現在、センターでは日本の研究だけでなく、中国、モンゴル、韓国、台湾などを対象にした研究も進行中です。その他アジア各地の研究者にも、九州大学アジア埋蔵文化財研究センターとの共同研究をしたいと思わ人に誇れる学生生活を過ごしてほしい大学時代に発掘した鋳型がその後の人生を決める16  Kyushu University Campus Magazine_2014.3▲田尻准教授(左)、陳教授(右)Front Runner :田尻 義了【Webサイト】アジア埋蔵文化財研究センター http://scs.kyushu-u.ac.jp/qa3rc/index.html▲飯倉D遺跡調査風景

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