九大広報Vol.93

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九大広報Vol.93

さのものがあります。そこそこの大きさのデブリを地球に持って帰るというか、地球に落とすようなものができたらな、と考えています。エンジンばかりを研究していると、その周りの必要な部品のことがわからなくなります。それを誰とどうやって開発していけばいいのかが今後の課題です。――そういった他分野との協力については、どのような努力をされていますか。山本:学会に出た際に、異分野の方々のお話をしっかり聞くこと、そして積極的に質問をすることですね。質問をすることで仲良くなると、自然と声をかけていただけます。そうやって周辺を広げていくことで、いろいろな方と研究をさせていただいています。火星に食料を運ぶために使われる可能性もある。――そもそも次世代ロケットエンジンを研究しようと思われたきっかけは何だったのでしょう。山本:「そこに山があるから」ではないですが、学生時代からロケットエンジンに興味があったからでしょうね。その中でもプラズマエンジンの先生がすごく楽しそうに講義をされていたのが始まりですね。――プラズマエンジンは、世界的にいつ頃から使われていたのでしょうか。山本:私が大学に入る頃にプラズマエンジンの実用化が進みました。一つには、アメリカの小惑星探査機が成功し、その有効性を示したということと、もう一つはソ連の崩壊によって、ソ連が持っていた技術が西洋諸国に知れ渡ったことが大きいですね。そこからどんどん使われはじめ、現在は200以上の人工衛星や探査機で使われています。――プラズマエンジンの利点はどういうところにありますか。山本:一番の利点は燃費がいいことです。酸素と水素などの化学反応を利用したよく見るロケットエンジンですと、燃料が探査機の半分ぐらい占めてしまうのですが、これをプラズマエンジンに置き換えると10分の1ぐらいで済んでしまいます。そのため、衛星を小さく軽くすることができます。たとえば、気象衛星「ひまわり」のような静止衛星であれば、打ち上げの途中からプラズマエンジンを使うことによって、コストを約半分に抑えることができます。――その利点を生かしてますます活用されそうですね。山本:将来の有人火星探査に向けて、人が乗る宇宙船ではなくて、前もって食料や燃料など必要な物を運ぶ貨物船のエンジンに使う計画もあります。その前段階として、アメリカでは小惑星を捕獲する計画のエンジンとして採用されようとしています。――アメリカといえば、山本先生がコロラド州立大学に研究員として行かれたきっかけは、どういうものだったのですか。山本:学会で同じような発表をしていて、発表後に意気投合したのがきっかけです。ヤリン先生(コロラド州立大の先生)のほうが、より高度な実験をされていて、行ってみたいと思い、行っていいかと尋ねたところ、快く了承いただいたので、がんばって行ってきました。向こうでは、光の計測技術を学びました。レーザーを使ってエンジンの寿命評価をするための技術です。今でもコロラドでの知識を使って研究をやっていますし、ヤリン先生とは共同研究も続けています。イオンエンジンの仕組みの解説図プラズマ中のイオンのみを電場を使って加速して、その反作用で推力を生み出します。そのままではエンジンは負に帯電してしまうので、別の部品から電子のみを放出し、中和します。イオンエンジンの噴射実験の様子「はやぶさ」に使われたものと同型のイオンエンジン(左)と、山本准教授が開発している小型イオンエンジンKYUSHU UNIVERSITY Campus Magazine 2014.0508