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概要

九大広報Vol.94

――解決したい問題に対して、まずは良いモデル化をして、そこから良い解き方を考えていくという流れがあるわけですね。小野:はい。それが一つのストーリーです。私たちの研究は、基本的にそのようなラインに乗ったものだと考えてください。――研究をしていて喜びを感じるのは、どのようなときですか。小野:単純に、証明したいことを証明することができたらうれしいですね。良いアルゴリズムを設計するということは、その正しさや良さを数学的な定理として証明することでもあります。定理の証明というのは、直感で「これはきっと正しいだろう」と予想するところから始まります。「正しいだろう」に対して、論理を積み上げていって、最終的に証明するわけです。そこまで詰め切れたときに「自分の直感は正しかったんだ」とわかる瞬間は、すごくうれしいですし、「自分に論理を詰め切る力があった」と実感できることもうれしいですね。――先生は、平成20年と平成21年に情報処理学会「※FI T論文賞」、平成22年に同会の「※山下記念研究賞」を受賞されていますが、その受賞は研究活動において励みになりましたか。小野:それぞれに思い入れはありますから、やはり励みにはなりますね。研究者にとっては、自分が満足する結果を得られることが一番の励みなのですが、それが自己満足で終わってしまうのは残念なことです。その点、賞をいただけたというのは、人にその良さがわかってもらえたということですし、人からの評価と自分の評価が一致したということで、うれしいことだと思います。※FIT論文賞一般社団法人情報処理学会が定める賞で、情報科学技術フォーラム(FIT)において、特に優秀と認められた論文に贈られる賞。※山下記念研究賞一般社団法人情報処理学会が定める賞で、研究会およびシンポジウム発表論文の中から特に優秀な論文を選び、その発表者に授与される。――先生が、今、注目されている研究はありますか。小野:おもしろい応用例になりますが、この分野の研究はそもそも数理パズル的な性質を持つものが多く、研究成果がそのままパズルに応用できるものもあります。「数独」というパズルがありますが、これはラテン方陣という組合せ構造に関するパズルです。ラテン方陣自体は、例えば負担の少ない計画停電のスケジュールを作ったりするのに関係しています。数独のようなタイプのパズルを解く高速で完璧なアルゴリズムを作るのは原理的に無理、という有名な予想があります。しかし、ラテン方陣に関する研究を数独に応用すると、どんな問題に対しても空欄のうち最低60%は埋めることができます。60%なんて意味ないと思われるかもしれませんが、「最低でも」というのがポイントで、たいていの9×9の数独の問題ならほとんど埋まります。このあたりの結果を7月初旬イタリアである国際学会で発表してきます。あとパズルと言えば、「Rush HourR」というパズル(写真)があります。「箱入り娘」というパズルと似ています。このタイプのパズルは数独よりも数段難しいのですが、このパズルと本質的にほぼ同じ性質を持つ重要な問題の計算論的な難しさについて、今研究しています。大切にしているのは価値観の教育です。――ところで、先生は、今の九大生に対してどのようなイメージをお持ちですか。小野:みんなベースは優秀だと思いますよ。これは、九州の地方性もあると思いますが、すごく優秀な学生でも地元志向が強いから、そういう学生が集まっているのでしょうね。もう一つの特性は、素直な子が多いこと。見た目はとんがっている子でも、ビシッとやってくれます。欲を言うと、ちょっとくらい外れていてもおもしろいことをやってやろうとする学生がもう少し多ければと思います。――先生が日頃の教育で大切にしていることは何ですか。小野准教授(左)に勧められて、パズルゲーム「Rush HourR」に挑戦する浜瀬准教授(右)と古賀さん(中央)小野准教授が授賞した情報処理学会「山下記念研究賞」の記念メダルと賞状「FIT論文賞」は、2008年と2009年の2年連続で受賞KYUSHU UNIVERSITY Campus Magazine 2014.07 09