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概要

九大広報Vol.94

フィリピンの子どもたちの生き生きとした姿に惹かれた。白石さんはフィリピンで、現地NGOと協力し、住民サポートを中心とするスラム改善事業、住民参加による低所得者用住宅計画のためのワークショップの運営などに取り組んでいます。「最初は研究室の活動に興味をもったのがきっかけです。フィリピンでは、政府が低所得者向けの住宅を供給していましたが、トップダウンの計画ではさまざまな問題が生じました。実際に現地調査に行ってみても、住宅の環境は決して良いものではありませんでしたが、その中で精一杯生きている人たちや、子どもたちの生き生きとした姿にすごく惹かれました。また、日常的な洪水や地震などの災害に対する工夫は、日本人としても学ぶべき点が多いと思います」地域の人のつながりと新しいアイデアの融合を。昨年は女性建築家だけで構成されたNGOと活動をともにしました。活動内容は、住民参加型の集合住宅計画です。その成果は卒業論文「メトロマニラの不法定住地改善事業におけるPeople'sPlan」としてまとめました。「調査の結果を設計という形でアウトプットする際に、私たちなりの視点や工夫を入れていくのですが、新しいアイデアだけではダメです。その地域に昔からあるコミュニティの形、人と人のつながりや家族のあり方などを理解し、それを融合させた提案をしなければなりません。資金面も重要で、コストを考えながら提案することにも苦労します」大橋キャンパスの魅力はつながりが強いこと。卒業設計が数々のコンテストで評価されたことを白石さんは大きな経験だったと言います。「いろいろな人の意見を聞くことで、自分の考えを相対化できたことは大きかったですね。それが次のアイデアにつながっていきます」また、白石さんは大橋キャンパスの研究環境に大きな魅力を感じています。「自由で創造的なキャンパスの中で、伝統的に先輩・後輩、先生方などのつながりが強いんです。日頃の研究や卒業設計でも、4年生のために後輩たち数人が徹夜で手伝ってくれます。私の卒業設計もたくさんの後輩たちに助けてもらいました」どういうことに価値を見出すのかが大事。白石さんから後輩たちへのメッセージです。「開発途上国には、住宅問題をはじめとした貧困やジェンダーなどの課題が山積しています。大学で専門を学ぶことと同時に、自分が何に価値を見出し、問題にどう関わっていけるのかを考えることが重要です。これからたくさんの後輩と活動をともにできることを楽しみにしています」取材中はずっと緊張した面持ちの白石さんでしたが、最後に将来の夢を聞くと、魅力的な笑顔でこう答えました。「その国や地域に根ざして、常に住民に寄り添った建築家になりたいです」研究室で明るい仲間に囲まれて白石さんの魅力は何といっても、その明るさと積極性ですね。途上国の現地に行っても、ガヤガヤとした雰囲気の中に溶け込んでいくことができます。建築設計では、技術的な側面に加えて、ユーザーの意見や気持ちをどれくらい受け止められるのか、それをどう設計に反映させていくのかについて考えていくことがとても重要です。このことは、熟練の建築家でも忘れがちです。しかし、彼女の場合は、設計の能力に加え、問題の発見能力や、コミュニケーション能力、自然なふるまいの中でさまざまな関係を紡いでいく能力がとても優れています。卒業設計が数々の賞を受けたのも、建築を創造する過程や、その地域が必要としているものを即座に捉えるセンスが優れているからだと思います。ユーザーとの関係構築能力がとても優れています。指導教員より芸術工学研究院田上健一准教授(たのうえけんいち)■関連W e bサイトへhttp://www.ed.design.kyushu-u.ac.jp/九州大学芸術工学部環境設計学科その国の住民に寄り添った建築家になりたい福岡県立修猷館高等学校(福岡県)?九州大学芸術工学部環境設計学科?九州大学大学院芸術工学府デザインストラテジー専攻修士課程1年白石レイさんKYUSHU UNIVERSITY Campus Magazine 2014.0712