ブックタイトル九大広報Vol.94

概要

九大広報Vol.94

マスコミ情報を鵜呑みにせず自分自身で理解すること。――視聴者にお天気を伝えていくにあたって、どのような点に一番気をつけていますか。手嶋：視聴者にとってわかりやすい気象情報を伝えることが一番です。ニュース番組の中で気象情報をお伝えできる時間はわずか2、3分です。様々な気象情報の中からその時々に伝えるべき情報を取捨選択しています。情報を整理せず、詳しく伝えてしまうと聞き手はかえって混乱してしまいます。気象情報は単純化してイメージしやすく、わかりやすく伝えることが大切なのです。ときには失敗して天気予報が外れることもありますが、そんな際は「ごめんなさい」と謝るしかありません（笑）。「今日の放送はうまく説明できた」と思ったことは残念ながら一度もありません。いつも終わった後に「こう言えばよかったかな、そう言えばわかりやすかったかなと」悩むことの毎日です。加えて、最近は大きな気象災害、自然災害が増えているのでそんなリスクも伝える必要があります。大雨など異常気象時には被害の軽減につながるような情報も欠かせません。もし、気象情報を見たことで災害から免れたと言われたらそれに勝る喜びはありません。その他、平常時には気象情報だけでなく、季節を感じる歳時記や花など風物詩も一緒にお伝えできればと思っています。――テレビの仕事はどうですか？手嶋：気象キャスターとして気象情報を伝える以外に番組のロケ取材で農家を訪れたり、温暖化の影響について専門家へインタビューをしたり、ときには外国の環境問題を尋ねたりと様々な貴重な体験をさせてもらっています。気象が身近な生活や暮らしにどう影響しているのか、直接体験できるのは貴重な機会だと思います。逆にテレビの仕事の辛いところは、関わる人も内容も移り変わりが早く、先の見通しが立たないことです。来年も同じ仕事が続く保障はありません。毎日、忙しくて充実感はあるのですが、過去を振り返ると自分がこれまでやってきた仕事って何が残っただろうと自問することもあります。「いつまでもあると思うな人気と仕事」まさにそんな世界です（笑）。――災害のほかにも、熱中症やＰＭ2.5に対する予防・対策など、人の健康に直結する情報が求められていますが、そのような知識を得られるために、どのような勉強をされていますか。手嶋：新聞やインターネット、本などから知識や情報を得ることが多いのですが、不正確なことも多いので、できるだけ直接、専門家や研究者に疑問を質問しています。環境や健康という分野は調べてもどれが正しい説明かわからないことも多いですね。例えばＰＭ2.5は、大陸からの微小な大気汚染物質として騒がれていますが、国内でも大量に排出されています。一般家庭からも調理の際など化石燃料の燃焼に伴って多くのＰＭ2.5が排出されています。マスコミの情報を鵜呑みにしないで自分自身で理解する必要がありますね。朝起きて最初に見る気象庁のWebサイト。――インターネットを通じて気軽に気象情報が得られる時代ですが、手嶋さんがお勧めする賢い活用術などがあれば教えてください。手嶋：気象庁のWebサイトは情報量が多く、非常に参考になります。毎朝、起きたらまず気象庁のWebサイトから気象衛星や気象レーダーの画像を見てはいかがでしょうか。それだけでもこの先の天気の傾向がわかりますし、洗濯するかどうか、自転車で出かけるかどうか、その日の行動や過ごし方が変わってきます。さらに福岡市や福岡県などの自治体の防災メールに登録しておくと、大雨など異常気象の際には雨量や河川水位などが自動的に個々の携帯電話に配信されて、状況判断に役立ちます。いざというときのためにこの登録はお勧めです。――21世紀は自然災害が多い気がしますが・・・。手嶋：先日、兵庫県南部地震阪神・淡路大震災（平成7年）と福岡県西方沖地震（平成17年）と東北地方太平洋沖地震東日本大震災（平成23年）を全て体験したという人に偶然出会いました。確かに20世紀末からひとりの人間が一生のうちに体験するかどうかというような大災害が相次いでいます。加えて九州北部豪雨（平成24年）など温暖化の影響かこれまで経験したことがないような大雨も降りやすくなっているのも事実です。そう考えると21世紀は災害や気候変動の時代といえるのかもしれません。従来の暮らしや安全の価値観を見直す時期にきたのかもしれませんね。福岡の桜の開花を決める標本木の前で自然談義をする手嶋さん（右）と柿添さん（左）KYUSHU UNIVERSITY Campus Magazine 2014.07 05