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概要

九大広報Vol.94

SERIES KYUDAIJIN――今の天気予報の精度はどのくらいでしょうか。手嶋:今の気象庁の天気予報は85%前後当たります。これは翌日の予報で該当地域に雨が降ると予報して実際に降った場合と、雨が降らないと予想して実際に降らなかった場合を合わせた数字です。でも、毎日「あすは晴れ(雨はない)」と言い続けても66%は当たります。日本は平均すると年間120日前後雨が降るので、逆に考えれば3分の2が晴れとなるからです。ですから、当たる確率をアップさせるために膨大なお金や技術が費やされていることになります。ちなみに業界用語で雨が降ると予想して実際に降らないことを「空ぶり」、雨が降らないと予想して実際に降ることを「見逃し」と言います。野球と同じで「空ぶり」より「見逃し」が悪いとされます(笑)。――もっと天気予報の精度が上がれば災害は小さくなるのでしょうか。手嶋:天気予報の精度が上がれば災害が減るのかは微妙な問題です。というのも天気予報が当たって大雨が降っても、その場所でどんな災害が起きるかは別問題だからです。たとえば土砂災害が起きる条件は雨量だけでなく、そこの地形や地質、土中の水分量や植生などにも大きく左右されます。集中豪雨など災害を引き起こす雨は局地性が強く、予測すら難しいのに、どこでどんな災害が起きるのか予想するのはさらに困難なのです。天気予報はある程度の面的な予報であるのに対して、災害が発生するのはピンポイントです。災害の被害を小さくするには気象情報を参考にした早めの避難など事前行動しかないのが実情です。研究の手段や方法を自分で考えることが大事。――大学で学ぶうえで、大事なことは何だと思いますか。手嶋:上から指示されたとおりに勉強すればよかった高校とは違って、大学では研究室の中で自分に合うテーマを見つけて、それに向かって手段や方法を考えることが要求されます。そのアプローチの過程が一番大事ですね。机に向かうだけではなくて、先輩や友人と議論したり、実習や実験に積極的に参加することで先が見えてきます。思ったような結果が出ずに落ち込むことも多いのですが、それが大学の生きた学問だと思います。もし就職で自分の専門とは関係ない仕事に就いても、大学生活で学んだことは実社会で必ず役立ちます。大学は社会で壁にぶつかったり、不安になったりしたとき、解決するために開く引き出しの数を増やす場所かもしれません。――それでは、最後に九大生やこれから大学生となる人たちにメッセージをお願いします。手嶋:大学時代のように時間に余裕があることは人生で二度とありません。是非、興味の持てることを探してください。同時に大学時代は落ち着いて自分を見つめ直す時期かもしれません。また、就職の際には女性は職場環境もよく調べた方がいいと思います。男女雇用機会均等といっても結婚、出産した後でも前と同じように働ける会社は今でも少ないと思います。社会に出た後に再びやり直すのは、大変な手間と時間、お金もかかりますからね。価値観が複雑で移り変わる現代は、将来の展望が見えにくい時代だと思います。進路に悩んでいる人も多いと思いますが、本当にやりたい仕事を見つけてほしいですね。ブランドや大きさだけで会社を選ぶのではなく、十年後に自分がどんな仕事をしているか具体的に展望が描けるかが大事だと思います。19 9 8年、中国チベット高原で気象観測したときのスナップ九大人テレビスタジオでの撮影収録風景聞き手の柿添さん(右)と手嶋さんKYUSHU UNIVERSITY Campus Magazine 2014.0706