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概要

九大広報Vol.95

「ハイブリッド分子」を活用し、医学的に重要な物質を検出。  高原さんは、DNAアプタマーと酵素を組み合わせたハイブリッド分子を活用する研究を進めています。 DNAアプタマーとは、通常二本鎖状のDNAが一本の紐状になったもので、特定の分子に結合する性質を持ち、中でもタンパク質のひとつであるトロンビンのみと結合するDNAアプタマーが有名です。トロンビンは凝血因子のひとつで、存在を検出することで血栓が生成する病気に役立つ、医療的にも重要な物質です。 もし、DNAアプタマーがトロンビンと結合したことをシグナルとして取り出すことができれば、トロンビンの存在を確認することができます。そこで、ある物質を分解して発色するという働きを持つ酵素と、DNAアプタマーを結びつけたハイブリッド分子を作り、トロンビンが結合した際に発色させることで、高感度な検出が可能になるのです。 「DNAアプタマーと酵素のどの部分を結合させるかというのが重要で、難しいことです。酵素とDNAアプタマーの機能を邪魔しないように結合させるために、ほかの酵素を使った酵素反応を使います。それによって、100%狙った部分でハイブリッド化できます」 ハイブリッド分子は、さらなる応用が可能です。 「トロンビンの検出と同じように、アルツハイマー病の原因と考えられているアミロイドを検出する研究を進めています。また、医療だけでなく、地球に優しいバイオ燃料の作製にも役立ちます。自然界に存在するセルロース系バイオマスを酵素で分解して作るのですが、その過程でハイブリッド分子を活用することで、より効率的な分解ができるのです」受賞したことで、誰かの役に立てることがうれしい。 高原さんにとって大きな転機となったのは、アメリカへの留学だったそうです。 「テキサスに4カ月間行かせていただいたのですが、大きな刺激になりました。英語の勉強や国際学会に出ることの大事さも分かりましたし、自分でもいつかは海外で活躍できる人間になりたいと強く思うようになりました」 また、高原さんは、立て続けにさまざまな受賞を受けましたが、その論文が誰かの手によって〝成長?してくれることを願っています。「受賞したことによって、誰かが私の論文を参考にして、さらに発展させてくれる可能性があるわけです。そうやって誰かの役に立つというのが、とてもうれしいですね」機会があれば、ぜひ海外に行って刺激を受けてほしい。 高原さんは子どもの頃は「お医者さんになりたかった」と言います。 「病原物質を検出することは、診断薬を作るのにも重要な要素ですから、メディカルの部分に貢献できていることはうれしく思います」 最後に、後輩たちへのアドバイスをいただきました。 「私自身がそうだったのですが、理系の人は実験がうまくいかなくても、修士2年になるまでは諦めないで根気よくがんばってほしいです。それから、機会があれば海外にぜひ行ってほしいです。そこで受ける刺激は、きっと大きいと思います」研究室にはブラジルからの留学生も在籍 高原さんは、見た目でのんびりしているように思われがちですが、中身はしっかりしています。研究室に入って来たときは、本当におとなしい感じでしたが、着実にステップアップしているという印象を持っています。ちょっとだけ抜けている部分もありますが、それは十分に愛嬌といえる範囲ですね(笑)。 留学は、アメリカにいる私の友人から「留学生の枠が取れた」と連絡をもらって、「誰か行ってみたい人はいるか」と聞いたら、彼女が真っ先に手を上げました。アメリカから帰ってすぐに博士進学すると申し出てきたので、よほど良い刺激になったんでしょうね。自ら進んで渡米した積極性も素晴らしいです。 得意の英語を武器に、世界で活躍できる研究者になってほしいと願っています。得意の英語を武器に世界で活躍できる人間に。指導教員より工学研究院神谷 典穂 教授(かみや のりほ)■関連Webサイトへhttp://www.九州大学 工学研究院応用化学部門分子教室 cstm.kyushu-u.ac.jp/研究がメディカルの分野に貢献できていることはうれしい福岡県立修猷館高等学校(福岡県)?九州大学 工学部 物質科学工学科?九州大学 大学院工学府 化学システム工学専攻 修士課程 ?九州大学 大学院工学府 化学システム工学専攻 博士後期課程高原 茉莉さん14 KYUSHU UNIVERSITY Campus Magazine 2014.09