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概要

九大広報Vol.95

伊都キャンパスへの移転があったからこそ、九州大学の未来、社会の未来を切り拓く新しい研究の数々が生まれたのです。椎木講堂1階ロビーにて第二十二代九州大学総長インタビューPresident interview of Kyushu University無事に任期を終えられるのは周りの方々のおかげ。――まずは、6年の任期を終えられるお気持ちをお聞かせください。有川:大変な6年間ではありましたが、理事の方々、副学長や総長特別補佐の方々、先生方、事務局の方々に大変よくやっていただいたと思っています。みなさんが、丁寧に、精一杯の努力をしていただいたおかげで、さまざまな課題をクリアしていくことができました。構成員すべての方に感謝しております。――伊都キャンパスへの移転は特に大きな事業であったと思います。有川:総長就任前はキャンパス移転担当の理事・副学長でしたので、伊都キャンパスに関しては一番詳しいのではないかと自負しております。平成3年に移転が決まり、平成17年に第一陣が移転して10年が経ちます。計画された時点では、自然と歴史に恵まれた場所という言い方をされていましたので、キャンパス用地を開発するにあたっては、数多く出てきた遺跡や生物多様性の保全に最大限の配慮をしてきました。それと同時に、未来の社会を描くための「実証実験の場」としてのキャンパスという一面も大切にしてまいりました。――実証実験の例として、どのようなものがあるのでしょうか。有川:例えば、職員や学生が持っているICカードは、学内で考案し、定着させてきました。このカードは、社会システムの基盤になる認証・セキュリティの最先端の実証実験とも言える取組で、自治体や海外ではバングラデシュでも使われています。――移転当初から注目を集めていた水素エネルギー研究については、今や世界最先端の研究拠点となりましたね。有川:水素エネルギーについては、いよいよ来年には水素燃料電池自動車が市販されるところまできています。水素研究は、伊都キャンパス移転の直前に、本格的に取り組むという一大決心をして、学内的に組織整備をしてまいりました。その成果として、水素ステーションや、水素エネルギー国際研究センター、水素材料先端科学研究センター、世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)のカーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(ICNER)、さらには、次世代燃料電池産学連携研究センター(NEXT -FC)を開設することができました。これらは、伊都キャンパスに移転しなければ発想さえできなかったと思います。折しも、原子力発電の停止ということを受けて、二次エネルギーへの注目が集まる中、水素エネルギーの研究は極めて重要な取組となりました。10年前の状況を考えますと、水素エネルギー研究に本格的に取り組むというのは、相当な決心・決断が必要だったのですが、その決断ができて本当によかったと思っています。水素研究に限らず、キャンパス移転があったからこそ、九州大学の未来、社会の未来を切り拓く新しい研究の数々が生まれたのです。――キャンパス移転によって周辺地域にも大きな変化があったのではないでしょうか。有川:大学が移転したことによって道路や住宅の整備、関連施設の増加など、周辺の開発も急速に進みました。新しい住宅には若い世代が住み、若さがあふれる地域となっています。キャンパスも、そしてその周辺も、まさしく未来への可能性を感じさせられるものになっていると思います。伊都以外でも、馬出の九大病院の再開発が完了し、最先端の医療を展開できる環境基盤が整いました。「患者さんに満足され、医療人も満足する医療の提供が出来る病院」というコンセプトを目指し、病院長の大きな努力もあって経営面でも安定しています。204 KYUSHU UNIVERSITY Campus Magazine 2014.09