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概要

九大広報Vol.95

第二十二代九州大学総長インタビューPresident interview of Kyushu University自律的改革を進める独自の改革制度を導入。――百周年記念事業では、大変なご苦労もおありになったのでは。有川:結果的には大変良い形で終えることができました。募金についても目標を達成することができましたし、椎木正和様からのご寄附によって立派な椎木講堂が完成し、入学式や学位記授与式を学内の施設で執り行うことができるようになりました。また、稲盛財団から稲盛財団記念館をご寄附いただき、稲盛フロンティア研究センターへの財政的な支援をいただくなど、一般的な記念事業とは違ったことができたと思います。――百周年を機に九州大学基金を設立されたそうですね。有川:みなさんからいただいたご寄附を基にして作ったのが九州大学基金です。この基金は、学生や若手の教職員を支援する多くのプログラムのために活用しています。そのひとつ、初代総長の山川健次郎先生にちなんだ山川賞は、今年で3年目となりますが、受賞した学生たちを見ていると、世間で言われているような内向的な印象は全くなく、学生の意欲や能力の高さを実感できます。――次の百年に向けての行動計画も立てられ、すでに取組が始まっていますね。有川:先ほどの基幹教育院もそうです。百周年の年から2年半の準備期間を設けて、今年から「基幹教育」がスタートしました。百周年を機に導入したもうひとつの改革が「大学改革活性化制度」です。政策や財政状況の変動があっても、大学が自律的に改革を続けられる、永続性のある強靱な改革のスキームです。――大学のためにフィードバックされる制度なのですよね。有川:部局から見れば、自分たちを変えていくためのエンジンになっています。例えば、癌の研究は、この制度を活用して充実しています。新たな百年に向けての基本理念の冒頭に「自律的に改革を続け」と謳っていますが、この制度の導入によって、まさに自律的な改革が行われているのです。――平成21年には主幹教授制度も導入されました。有川:専門分野で高い業績を上げた先生に主幹教授の称号を差し上げて、優遇する制度です。すべての先生方に主幹教授になるチャンスはありますが、透明性のある評価のもとで、チャンスは平等でなければなりません。例えば、5人でひとつのものを分けるときに、5等分するのではなく、3分の1を持っていく人がいてもいい。ただし、その人が多めに持っていく理由が明確であり、ほかの人にも平等なチャンスが確保されていることが大事なのです。先生方の国際化が今後の課題。――九州大学で学ぶ留学生が2千人を超えましたが、国際化についてはどのようにお考えですか。有川:留学生のほとんどは大学院生です。大学院の定員から計算すると、15%強が留学生となります。その点では、国際化は随分と進んでいると思います。そうであるならば、先生方の定員の15%が外国人であってもいいのではないかと思います。先生方の国際化というのが、今後の課題と言えます。移転や大学改革など、あまりにも多くの課題がありましたので、この6年間はそれらと格闘してきましたが、今後はグローバル社会に対応できる体制を確立してほしいというのが、これからの九州大学に期待することです。――グローバルといえば、リーディングプログラムの展開もあります。有川:博士課程教育リーディングプログラムは、国からの支援を受けたものが3つ、九州大学独自で展開しているものが3つあります。グローバルリーダーを育成するこのプログラムも、国際化の大事な要素になっています。――総長は「どのような分野でも世界のトップ100大学に入る大学に」ということを常々おっしゃっていました。有川:百周年の際に宣言しました「九大百年、躍進百大」という言葉にも、その願いは込められています。例えば、応用化学などのいくつかの分野ではすでに世界の百位以内に入っていますが、どのような切り口で評価されても百位以内に入ることを目指しております。――世界大学ランキングセンター(CWUR)のランキングでは、今年初めて92位に入りました。有川:CWURは、特徴として卒業生の活躍が重要なファクターになっています。客観的な評価だけにとても喜ばしいことです。九州大学の未来を信じて。――施設面、教育面、組織面など、これからの九州大学のために築かれたものが、本当に多いですね。有川:この6年間は、大事な順、難しい順に課題や改革に取り組んできたつもりですが、九州大学が取り組むべき課題はまだまだたくさんあります。教育面でいえば、MOOC(インターネット上で誰でも無料で自由に受講できる大規模オンライン講座)など、教育のオープン化への取組もありますし、それをいかに積極活用するかを考えていかなければなりません。また、法曹関係者を養成することも本学の大事な役割なので、ロースクールの活性化も重要な課題です。施設面では、それぞれのキャンパスのフレームワークプランを進める必要があります。施設整備は常に五十年先、百年先を見越して計画を立てなければなりません。そのような今後の課題にも、既にいくつかの手は打っております。――それでは最後にメッセージをお願いいたします。有川:様々なスケジュールが詰まっていて退任するという実感はまだ持てない状況ですが、最後のメッセージとしましては、冒頭にも申し上げました通り、この6年間は本学にとって激動の期間でしたが、周りの方々の支えのお陰でここまでたどり着けたのだと思います。役員、教職員、そして学生の皆さんに心から感謝しながら、今後の九州大学の更なる飛躍を期待しております。06 KYUSHU UNIVERSITY Campus Magazine 2014.09