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概要

九大広報Vol.96

を続けています。―― 自己組織化についてもう少しご説明いただけますか。玉田:自己組織化とは、材料間に働く相互作用で、自然に結晶化やパターン形成が進む現象です。現在は、金属のナノ微粒子を水面に撒いて、自己組織化によって二次元で結晶化させています。そこでは粒子間の距離が均等に保たれます。自己組織化によって、ナノ材料を並べることで、単独で存在しているときとは違う新しい機能を発生させていきます。―― そのような形成状態を誘発させるために、どのような方法を採られているのですか?玉田:環境を整えて、あとは物質本来に働く力で組織化させていきます。私たちの研究分野は、ナノテクノロジー、ナノサイエンスと呼ばれるものですが、その中でも、物本来の自発的性質を使って組み上げていくボトムアップ型のナノテクノロジーに入ります。自己組織化は、その典型的手法です。自然に優しく、エネルギーもそれほど必要としないので、環境負荷が小さいのが特徴です。物理的なものが好きだと気づいた東京大学での研究。―― どのようなきっかけで今の研究を始められたのですか。玉田:民間企業から始まって、国内外、産学官を含めて10カ所くらいの研究機関に在籍してきたのですが、研究テーマとしては表面科学を続けてきました。きっかけは、最初に勤めた会社で高分子の界面を研究する部署に配属されたことですね。ターゲットとなる材料は高分子から微粒子に変わってきましたが、表面科学という分野であることは変わっていません。―― 多くの研究機関をご経験されたのですね。玉田:民間企業では開発研究の部署だったのですが、そこから国内留学で東京大学の応用物理の研究室に行かせていただいて、そこで界面の物性測定を正式に始めました。もともと化学をやってきたのですが、そこで「自分は物理的なものが好きなんだ」と気づかされました。そのおかげで、今は化学と物理の境界のような研究を続けています。―― 先生は、公益社団法人日本表面科学会の第4回フェロー表彰を受けられていますね。対象となったのは、どのような研究ですか。玉田:賞をいただいた研究のタイトルは「分子およびナノ材料の二次元組織化に関する研究」です。ライフワークとしてやってきた分子の自己組織化から最近のナノ粒子の自己組織化までの基礎研究の成果をまとめたものです。私が理化学研究所で博士研究員を始めた1990年代半ばに、日本でも分子の自己組織化膜の研究が本格化し、以来この分野の研究を続けてきたのですが、分子の自己組織化をやっていたおかげで、いち早くナノ材料の自己組織化に着手することができました。そして一定の成果をあげたことが評価されたと思っています。▲公益社団法人日本表面科学会の 第4回フェロー表彰▲研究室の学生は「いつも私たちのこ とを優先して考えてくださる優しい 先生です」と語ります。金属薄膜表面にレーザー光をあて、ある一定角度で特有の光の吸収を観測する「表面プラズモン共鳴分光装置」10 KYUSHU UNIVERSITY Campus Magazine 2014.11