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概要

九大広報Vol.96

日本独自の研究に自信をもつことが大事。―― 先生は海外のご経験が豊富ですが、どのような点に日本との違いを感じたり、影響を受けたりされましたか。玉田:多くの国に行かせていただきましたが、最初は抵抗があっても、行った先の国が毎回好きになります。ただ、アメリカとヨーロッパでは、研究のスタイルがまったく違いますし、オーストラリアに行っても、シンガポールに行っても、また違う研究スタイルがあって、本当に国それぞれだなと感じました。海外から帰ってきた人の中には「日本をもっと欧米化しないと」という人もいますが、私はそうは思いません。国際共同研究は、それぞれの国で、違った研究スタイルをもった者同士が一緒に研究をやることに価値があるのだと思います。ですから、日本人らしさを含めた独自性をもつことが大事だと思います。―― それは私の専門である芸術、デザインでもまったく同じですね。戦後は欧米をまねることが主流でしたが、やがて日本の独自性を大事にしようという流れが生まれました。玉田:九州大学は昔から留学が盛んで、多くの学生・若手研究者が先端研究を海外で学び、研究を発展させてきたと聞いています。今は日本の科学技術も成熟期に入り、海外で学ぶ必要も薄れてきました。その弊害として、若者が海外に出なくなったという話もあります。これからの時代は、グローバル化と自分たちの独自性のバランスを考えていくことが大切だと思います。―― 最近では「グローカル」という造語もできていますよね。玉田:九州大学はまさにグローカルだと思います。アジアの玄関口としてのグローバル拠点であり、九州地区をまとめる地域拠点でもあるわけですから。グローカル拠点となれる土地柄の良さをもっと活かしていきたいですね。――では、先生は研究者として大切にされていることはなんですか。玉田:やはり独創性です。すべての人間が異なる能力と異なる経験を持っているわけですから、人まねで時間を無駄にさえしなければ、すべての研究者が自分なりの独創的な研究ができるはずと思っています。また研究の価値は、長い時間が経たないとわからないものですから、短期的な評価に一喜一憂せずに、自分にできる最善のことをぶれずに精一杯続けることが大事だと思っています。―― 先生が学生と接するにあたって、大切にしていることは何ですか。玉田:教えすぎないということです。自発的に考えることが何よりも大切ですからね。生活面では、私自身が軸のぶれない価値観を持ち、それを示すことを心がけています。そして、学生の自主性、自立性を評価すること。多様性を認めること。それには研究室の中での閉じた教育では不十分なので、研究室に国内外の研究者を招いたり、学生を共同研究先に派遣するなどして、異なる分野・文化、人格、性別、国籍、年齢の人と仕事をする機会をできるだけ持てるように気を配っています。――最後に在学生を含む若い世代へのメッセージをお願いします。玉田:とにかく「あきらめない」姿勢を身に付けてほしいと思います。あきらめずにできるまでやり切れば、すべて「成功」に終わるわけなので、それを信じて、とにかくできるまでがんばること、続けること。そうしたプロセスの中で、自分の想像を超えた自分が育っていく体験をしてほしいですね。▲聞き手の森田昌嗣教授(左)と共に12 KYUSHU UNIVERSITY Campus Magazine 2014.11