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概要

九大広報Vol.97

にいると「この学生は伸びる」というのがすぐにわかります。僕たちがやるべきことは、伸びようとしている学生に、できるだけいいチャンスを与える努力をするだけ。それさえやっていれば、人は自分で伸びていきますし、その方がいい研究者になると思っています。伸びる学生は積極的に提案してくるし、その積極性を受け入れてあげられるだけの研究環境(研究費や人脈も含め)を整えておくことが大事です。学生の自主性をどうやって引き出すかが僕たちの責務であり、研究がどれだけおもしろいかをきちんとプレゼンできれば、学生たちは自分たちの道を切り開いていきますよ。その積み重ねで、その学生は成長するんです。先生だって決してパーフェクトではないし、パーフェクトではない人間が全部指示を出すのは絶対に間違いを生みます。あとは、どんなに忙しくても1対1で接することは欠かしません。顔を見れば健康状態もわかるし、研究の進み具合や悩みの有無なども想像がつきますからね。―― それでは、ここからは井上先生の意外な素顔に迫っていきたいと思います。先生は、講義の途中でチョークを食べたという話を聞きましたが、それは本当ですか?井上:どこからそういう話を聞き出してきたんですか!?そんなことはしたことがありませんよ(笑)。薬学を学んでいる人は国家試験に通らないと意味がないわけですが、国家試験をパスするには、やはり教科書中心の講義になるわけです。確かに、教科書にはとても大事なことが載っていますが知識の缶詰みたいなものですので、ただ、それだけではおもしろくない、教える方も熱が入らないというときもあります。そこで、ちょっと刺激を与えようと、チョークにそっくりのお菓子をこっそり仕込んでおいて、それを講義中に取り出してポリポリと食べてみせたんです。遠目に見ると見分けがつかないから、みんなびっくりですよ(笑)。ただ、教室がシーンとして、気味悪い顔をした学生もいて、2学年にやっただけでやめました。―― 先生のお茶目は思いやりなんですね。この鼻メガネ(メガネとつけ鼻、口ひげが一体となった仮装グッズ)もお好きだそうですね。ある会合でずっとこれをつけていらっしゃったとか。井上:いやいや、すごい取材力ですね(笑)。実は、学会のインターネット会議で、みんなが退屈しないようにこれをつけて出たことがありますよ。でも、会議の冒頭だけです。そんな格好でまじめな会議が続くわけありませんからね。生き様を自分なりに考えて凛とした生き方を。―― それでは、最後に学生や若い世代の人たちにメッセージをお願いします。井上:九州大学の学生はしっかりしているし、いい学生が多いです。生き様を自分なりに考えて、自分なりの美学を持って生きてほしいと思います。願わくば凛とした生き方をしてほしい。学生にはよく「一所懸命」という言葉を伝えます。そして、その後は「不思善悪」という言葉を続けます。つまり「全力を尽くした後は、あまりくよくよするな」ということです。全力を尽くしてうまくいけば「善」だし、うまくいかなければそのときには「悪」とみえようとも、うまくいかなかった方がいいことに繋がることもあるんだよと。それが凛として生きることにも通じていくのです。―― ありがとうございました。全力を尽くした後は、あまりくよくよするな。それが「一所懸命」と「不思善悪」。Special InterviewSERIES KYUDAIJIN九大人▲井上理事・副学長(右)と山縣理事。08 KYUSHU UNIVERSITY Campus Magazine 2015.01