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概要

九大広報 Vol.99++

SERIES KYUDAIJIN支店長に、「部署を変えてほしい」と申し出たところ、「いまの君がいなくなっても僕は何も困らない。でも、君の上司がいなくなると会社にとって困るんだ」と言うんです。当時は入社5年目くらいだったでしょうか。人を見るときに「自分に合うのかどうか」でなく「会社にとって必要かどうか」という価値観で会社は動いているんだ、ということを教えてくれた、すごい言葉でしたね。だったら「なお一層頑張ろう」と思うようになったんです。―― 商社というと、出張も多いし、本当にハードなお仕事というイメージがあります。籾井:確かにそういう面はあります。でも、楽しいこともいっぱいありますよ。海外にもたくさん行けます。ニューギニア島とかシベリアとか、そういう普通の人が行けないような場所に行けるのは商社マン冥利に尽きると思いますね。パリとかロンドンに行くよりも、ヤシの木や大平原を見ると血が騒ぐ方でしたから(笑)。―― 普通の人が行けないような場所に行くと、「日本の未来をつくる」という夢や気概がかきたてられそうですね。籾井:それはありましたね。「これは日本のために絶対にやらなければいけない」と思ったら、とことんやりました。―― お仕事なさる上で一番大切にしてきたことは何ですか。籾井:やはり、逃げないこと。真正面から思いを伝えることです。それだけでは通じないこともありますが、老獪なことはできないから、真正面からぶつかっていきました。「なぜそれをやるのか」という思いや熱意。これが何よりも大切だと思います。日本を元気にするには国際交流は不可欠。―― 九州大学は、国際化に対応できる人材を育てる大学、世界レベルの教育研究を行う大学として、国のスーパーグローバル大学の13校のひとつにも選ばれました。一方で、今は地元志向の若者も多く、九州は特にその傾向が強いと言われます。このような状況について、どう思われますか?籾井:地元志向もいいことだと思います。ただ、日本という小さな国の中でこの国を元気にするためには国際交流は不可欠だと思います。たとえば、外から見るアメリカ人と、一緒に生活して感じるアメリカ人とでは、本当に違いますよね。やはり、そこに行かないと知り得ないこともあるわけです。海外志向をもっている人は自分の夢を実現すべくがんばってほしいですね。―― 籾井さんの青春時代は海外に対する夢や憧れがとても大きかった、と思いますが、現代の「国際化」は現実に迫られている面も大きいですね。日本の中だけに閉じこもっていては少子高齢化で国内市場は小さくなっていきますからね。籾井:そうですね。それに、現実をよく見てみると、日本の中だけで完結している仕事はあまりなくて、ほとんどの仕事が海外と絡んでいます。地元を大切にすることと国際化は対立しません。世の中をよく見て理解しようとすると、海外とつながっているのが現実なのです。九州という場所にいるからこそ、自分自身を成長させた方がいいと思います。―― 九州大学も、九州の大学であることを大切にしながら、九州にいても世界水準の学びができる。そういう大学でありたいと思います。籾井:そのためには、先生方がもう少し厳しくされた方がいいのではないでしょうか。別に試験を厳しくするということではありません。ハーバード大学あたりでは、必ず手を挙げて発言しないといい点がもらえません。私も3カ月だけ留学させてもらいましたが、みんな授業で手を挙げるんです。そして積極的に意見を言わせるけど、結論は出しません。日本では大学の授業で手を挙げて発言することってあまりないですよね。先生方が一方的に話すだけではなく、そういう教育が大事なのではないですかね。日本の大学でも、そのような教育スキルが身に付けば、学生たちが放っておいても勉強するようになりますよ。―― 最後に大先輩として、九州大学の学生に向けたメッセージをいただけますでしょうか。籾井:学生時代は、自分の夢を探してほしいですね。大学生活で、将来自分がやりたいことは何だろうと、しっかり考えていただきたいです。私は九州大学で学んでいたころに、「海外と関わる仕事をしたい」という、ただそれだけの夢がありました。そんな簡単なものでいいんです。そして、その夢に向かって過ごしていければ、学生時代は大成功だと思います。勉強だけでなく、おおいにいろいろなことを経験してください。―― ありがとうございました。※このインタビューは、 平成27年1月に行いました。九大人▲籾井会長のスケジュールはまさに分刻み。インタビュー終了後も、すぐに秘書とその後のスケジュール確認を行っていました。10 KYUSHU UNIVERSITY Campus Magazine 2015.07